製造も在庫も販売もしない。ゲームのアイデアをMattelに貸し、30万ドルのロイヤルティを得た商品ライセンス事業

カードゲーム 起業・副業アイデア

元記事

記事タイトル
Ideas are Worthless? Nate Earned $300,000 in Passive Income From His (An Intro to Product Licensing)

掲載サイト
Side Hustle Nation / The Side Hustle Show Episode 99

出演者・事業者
Nate Dallas氏

公開・更新日
2015年3月19日更新

元記事URL
https://www.sidehustlenation.com/product-licensing/

Nate Dallas氏は本業を持ちながら商品アイデアを考え、その一つであるPictionaryに着想を得たカードゲームを玩具大手Mattelへライセンスしました。本人と兄弟が得たロイヤルティは最終的に合計30万ドルに達したと紹介されています。後年のSide Hustle Nationでも、約10年間にわたって30万ドルのロイヤルティを得た事例として紹介されています。

ただし、この金額は本人へのインタビューなどをもとにした数字であり、第三者による監査済みの数値ではありません。またSide Hustle Nationは、一部の紹介リンクから報酬を得る場合があることを明記しています。

3分で要約

商品アイデアを思いついたとき、普通はこう考えます。

試作品を作る。工場を探す。在庫を仕入れる。ECサイトを作る。広告を出す。小売店へ営業する。

Nate氏は、この大部分をやりませんでした。

考えたカードゲームの権利をMattelへライセンスし、Mattel側が商品化・製造・販売する。その代わり、売上に応じてロイヤルティを受け取る方法を選びました。

Side Hustle Nationは、この事例について「自分たちでデザイン、製造、販売を行わず、実行できる会社を見つけた」と説明しています。結果として兄弟で合計30万ドルのロイヤルティを得ました。本人自身も、こうした成果は一般的ではないと認めています。

ここで面白いのは、「商品を作らなかった」ことではありません。

事業を構成する仕事のうち、自分が得意な部分だけを残したことです。

Nate氏が担うのは、アイデアを考える、簡単な試作品を作る、企業を探す、提案する、契約するところまで。

大量生産、在庫管理、物流、小売店営業、広告、返品対応など、資本と組織が必要な部分は既存企業へ渡します。

つまり、自分で小さな玩具メーカーを作るのではなく、すでに製造設備と販売網を持つ会社の新商品開発部門になるような事業です。

元記事では、7%のロイヤルティ案件ではなく3%の案件を選んだことも取り上げられています。

ここから読み取れるのは、ライセンス事業では「ロイヤルティ率が高いほど良い」とは限らないということです。

3%でも100万個売れれば大きい。7%でも1万個しか売れなければ小さい。

取り分ではなく、取り分×相手の販売力で考える。

ライセンス事業の重要な特徴です。

主要な収益モデル

このモデルを単純化すると、

収益=ライセンス商品の販売数量×卸売価格等のロイヤルティ算定基礎×契約ロイヤルティ率+契約一時金等-試作品制作費-知財調査・出願費-営業費-ライセンス仲介手数料-弁護士・弁理士等の契約費用

となります。

普通の物販なら、売上が増えるほど製造原価、倉庫費、配送費、返品費も増えます。

ライセンス側には基本的にそれがありません。

1万個売れても10万個売れても、自分が1万個分の在庫を仕入れる必要はない。

そのため、一度ライセンス契約が成立した後の追加売上に対する追加原価は小さくなります。

さらに、Mattelの事例ではロイヤルティが約10年間続いたと後年紹介されています。

一度作ったアイデアが、他社の製造・販売活動によって長期間収益を生む資産になる。

ここが通常の商品販売との最大の違いです。

開始コスト

この事業の魅力は、商品開発なのに大量生産する必要がないことです。

必要なのは、アイデアの検証、簡易試作品、提案資料、企業への営業などです。

元記事でも、安く素早くプロトタイプを作る方法が議論されています。

ただし、「思いつきをメールするだけでいい」という話でもありません。

市場に類似商品がないか。誰が買うのか。既存商品のどこを改善しているのか。メーカーにとって既存の生産設備や販売チャネルで扱いやすいか。

ここまで整理して初めて、企業が検討できる商品アイデアになります。

また知的財産権にも注意が必要です。

日本の特許庁も、特許の対象となる「発明」を自然法則を利用した技術的思想の創作と説明しています。つまり、単なる思いつきやビジネス上のアイデアが何でも特許で守られるわけではありません。商品の内容によって、特許、実用新案、意匠、商標、秘密保持などを使い分ける必要があります。

必要スキル

この事業で差がつくのは、発明能力だけではありません。

むしろ重要なのは、企業が欲しいアイデアを考える力です。

メーカーにはすでに工場があります。

小売店との取引口座もあります。

営業担当者もいます。

その既存資産を大きく変更せずに、新しい売上を作れる商品ほど企業にとって扱いやすい。

つまり、

「世の中にないものを発明する」

より、

「この会社なら明日から売れそうな商品を一つ足す」

という発想のほうが現実的です。

さらに、提案先企業を探し、担当者へたどり着き、短時間で価値を説明する営業力が必要です。元記事でもLinkedInなどを利用した企業担当者の探し方が扱われています。

他人が見落としていたポイント

商品ビジネスでは、一般的に「全部自分で持つこと」が成功だと考えられています。

ブランドを持つ。

工場を持つ。

ECサイトを持つ。

顧客リストを持つ。

確かに成功した場合の利益は大きくなります。

しかし、その代わり失敗した場合も全部自分で引き受けます。

売れない在庫。広告費。金型。倉庫。物流。返品。営業人員。

ライセンスは、その構造を逆転させます。

利益の大部分を相手へ渡す代わりに、失敗したときの損失も相手へ渡す。

これは単なるロイヤルティ収入ではありません。

リスク配分の変更です。

さらに重要なのは、相手企業がすでに持っている資産です。

Mattelには世界的なブランド、製造能力、小売流通があります。

個人が同じ販売網をゼロから作るのはほぼ不可能です。

しかし「商品を売る」のではなく、「商品アイデアを売る」なら、その販売網を借りられます。

他人は「いい商品を思いついたら、自分で会社を作って売る」と考えていた。しかし、この事業者は「販売網をすでに持っている会社に商品だけ足せばいい」と考えました。

日本ならどう応用できるか

このモデルは玩具だけではありません。

文房具、キッチン用品、収納用品、アウトドア用品、ペット用品、ホテル備品、介護用品、業務用品など、既存メーカーが多く存在する分野で使えます。

たとえばホテル現場で、

「この備品はこうなっていれば使いやすい」

という改善案が見つかったとします。

そこで自社ブランドを立ち上げ、海外工場から1,000個輸入する必要はありません。

すでにホテル用品を全国販売しているメーカーへ、

既存商品+一つの改善機能

として提案する方法もあります。

特に強いのは、現場ユーザーには問題が見えているが、メーカー側には見えていない商品です。

事業構造を抽象化すると、

顧客の困り事を知っている人がアイデアを作り、製造・販売能力を持つ会社へ渡す

という分業です。

なお、日本で実際にライセンス契約を行う場合は、対象となる知的財産、利用範囲、独占・非独占、地域、期間、ロイヤルティ算定方法、最低保証、改良技術の扱いなど契約条件の設計が重要になります。特許庁もライセンス契約を含むモデル契約書を公開しています。

7つの勝ち筋フィルター

① 他人が見落としている切り口があるか

評価:★★★★★

商品を売るのではなく、商品化する権利を売ります。

「製造業へ参入する」のではなく、「既存メーカーの商品開発機能になる」という切り口です。

② 古くからある市場か

評価:★★★★★

玩具、日用品、文房具など、すでに巨大な販売市場があります。

新しい購買行動を教育する必要はありません。

③ 小さく始められるか

評価:★★★★★

大量生産する前に、紙、3Dプリンター、既製品の改造などによる簡易試作品で企業へ提案できます。

売れるか分からない段階で工場へ発注する必要がありません。

④ 在庫を持たずに済むか

評価:★★★★★

ライセンサー側は基本的に商品在庫を持ちません。

製造・在庫リスクをライセンシーへ移せることが、このモデル最大の特徴です。

⑤ ストック収益になるか

評価:★★★★★

契約が続き商品が売れる限り、ロイヤルティが発生します。

Nate氏の事例では、最終的に約10年間にわたって収益が発生したと紹介されています。

⑥ 粗利益率は高いか

評価:★★★★★

製造・物流・在庫原価を負担しないため、受け取ったロイヤルティに対する追加原価は小さいモデルです。

ただし契約獲得までのアイデア開発や営業には時間がかかります。

⑦ 再現性はあるか

評価:★★★☆☆

「アイデアをメーカーへライセンスする」という仕組み自体は再現できます。

一方、30万ドルという成果は明らかに成功例であり、本人自身も典型的な結果ではないとしています。

商品ヒット率の低さを前提に、多数の小さな提案を行う必要があります。

どうなったら失敗するのか

最大の死亡条件は、一つのアイデアにお金をかけすぎることです。

特許、金型、デザイン、試作品へ何百万円も使ってからメーカーへ営業し、誰も欲しがらなければ、ライセンスモデルの低リスクという強みが消えます。

二つ目は、「良いアイデアだから企業が欲しいはず」と思うことです。

メーカーが見るのは面白さだけではありません。

既存顧客へ売れるか。既存設備で作れるか。十分な市場があるか。自社の商品群と合うか。

三つ目は、ロイヤルティ率だけで契約を判断することです。

重要なのは、

ロイヤルティ率×販売数量×販売期間

です。

高い率を提示する小規模企業より、低い率でも圧倒的な販売網を持つ企業のほうが最終収入が大きくなる場合があります。

早期に確認したいKPI

確認したいのは、企業への提案件数、担当者接触率、商品評価へ進んだ割合、試作品依頼率、契約交渉移行率、1アイデアあたり開発費です。

この段階で売上をKPIにすると遅すぎます。

最も重要なKPIは「提案した企業のうち、具体的な商品検討へ進んだ割合」です。

何十社へ送っても「面白いですね」で終わるなら、メーカーにとっての商品価値が弱い可能性があります。

最初に取り組むアクション

最初に売る最小の商品

完成商品は作りません。

既存商品の小さな不便を一つ改善した簡易試作品までにします。

最初の顧客候補

その商品カテゴリーですでに類似商品を販売し、製造設備と販売チャネルを持っているメーカー10社です。

新規事業会社より、既存商品へ一品追加できる会社を優先します。

最初の集客方法

消費者向け広告は不要です。

メーカーの商品開発、企画、ライセンス担当者へ直接提案します。

可能ならその前に10〜20人の実際の利用者へ試作品を見せ、困り事が本当に存在するか確認します。

投入する費用と時間の上限

6週間、利用者20人、メーカー10社、試作品費3万円以内。

この段階では大量生産、金型製作、ECサイト開設は行いません。

知財出願が必要かどうかは、商品特性と公開・提案方法を踏まえて専門家へ確認します。

継続または撤退を判断する基準

メーカー10社へ提案し、最低2社が「詳しい資料が欲しい」「試作品を見たい」「社内の商品会議へ上げたい」など具体的な検討へ進むかを確認します。

誰も進まなければ、そのアイデアにさらに資金を入れるのではなく、次のアイデアを試します。

ライセンス事業では、一つのホームランを信じ続けるより、低コストで何度も打席に立てる構造のほうが重要です。

この事業の本質は、ゲームのアイデアを売ることではありません。自分で製造・在庫・販売網を持たず、すでにそれらを持つ企業へ「次に売る商品」だけを供給することです。

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