元記事
記事タイトル
This Mom’s Laundry Side Hustle Turned into an $12M Business
掲載サイト
Side Hustle Nation / The Side Hustle Show Episode 725
創業者
Susan Toft氏(The Laundry Lady)
公開・更新日
2026年2月26日更新
元記事URL
https://www.sidehustlenation.com/laundry-side-hustle/
The Laundry Ladyは、顧客宅へ洗濯物を取りに行き、洗濯・乾燥・畳みまで行って翌日などに返すオーストラリア発の洗濯代行サービスです。
Susan Toft氏が2012年に一人で始め、記事掲載時点では450人超の業務委託者を抱え、オーストラリア以外にもニュージーランド、カナダへ展開。年商は1,200万ドルと紹介されています。
売上や顧客数などは創業者本人へのインタビューをもとにした数字であり、第三者による監査済みの数字ではありません。またSide Hustle Nationにはスポンサー、アフィリエイトなどの商業的な導線があります。
3分で要約
Susan氏がこの事業を思いついた理由は単純でした。
会社員として働きながら子育てをしていると、洗濯物がたまる。洗うだけならまだしも、乾燥させ、畳み、片付けるまで終わらない。
「これを誰か代わりにやってくれないか」
そこから2012年、自宅の洗濯機と乾燥機を使い、一人でサービスを始めました。
Webサイトを作り、Google広告を出すとすぐに顧客が来ました。当時は洗濯関連キーワードのクリック単価も約20セントと安く、顧客を取ること自体には困らなかったといいます。
問題になったのは、その先です。
顧客はいる。しかし、自宅の洗濯機には上限がある。
5年間ほど一人で運営した後、家庭事情もあり、自分以外の人に仕事を任せる必要が出てきました。
そこで採用したのがフランチャイズではなく、業務委託モデルです。
作業者は自分の車で洗濯物を取りに行き、自分の洗濯機・乾燥機などを使って作業し、顧客へ届ける。本部はWeb集客、ブランド、予約システム、決済、研修などを提供します。
記事では、1件の売上の80%を作業者、20%を本部が受け取るモデルと説明されています。現在公開されている公式の業務委託者向け資料では、作業者へのコミッションは85%とされており、条件はその後変更されているようです。
平均顧客単価は1回約100ドル。しかも毎週または隔週で利用する顧客が多い。公式の募集資料でも、顧客維持率95%、80%超が毎週または隔週の定期利用と紹介されています。
つまりこの商売は、
洗濯代行会社を大きくした事例ではありません。
本部自身が巨大な洗濯工場を持つ代わりに、地域にすでに存在する「洗濯機・乾燥機・車・空き時間」を束ねて、一つの全国サービスに変えた事例です。
主要な収益モデル
記事掲載時点のモデルを単純化すると、
収益=総受注額×本部手数料率+システム・サービス関連収入-広告費-予約・決済システム費-本部人件費-顧客対応費-業務委託者の採用・研修費-システム開発・保守費
となります。
一方、作業者側は、
収益=担当顧客数×平均利用額×自分の取り分-水道光熱費-洗剤等-車両・燃料費-設備維持費-自分の作業時間
です。
ここで重要なのは、本部の売上が増えても、本部が同じ割合で洗濯機を増やす必要がないことです。
作業能力を増やしたければ、その地域で新しい業務委託者を増やす。
本部が持つ資産は洗濯工場ではなく、
ブランド、集客力、顧客、予約システム、業務標準
です。
逆に作業者は、自分で広告を出して顧客を集めなくても、本部から仕事を受けられます。
つまり、本部は仕事を持っている。地域の個人は作業能力を持っている。
余っている能力と、足りない顧客を組み合わせています。
開始コスト
最初からこの仕組みを作ったわけではありません。
Susan氏は自分の家庭用洗濯機と車で始めています。最初の数年間は一人で需要を確認しました。
業務委託型へ移行するときにも、いきなり独自アプリを何千万円もかけて開発しませんでした。
政府の補助金を活用して予約システムを作ろうとした際の当初予算は5,000ドル。しかし開発会社から「その予算では無理」と言われ、まず既製システムをカスタマイズして使いました。
独自システムを作ったのは、業務委託拠点が約200まで増え、既製システムでは処理しきれなくなってからです。
ここも重要です。
システムを作ってから事業を伸ばしたのではありません。事業が既存システムの限界まで伸びてから、自社システムを作っています。
必要スキル
洗濯そのものをできることだけでは、この事業は大きくなりません。
差がつくのは、需給管理です。
ある地域で広告を出しても、仕事を受けられる作業者がいなければ顧客体験が悪くなる。そのため同社では、作業者がいる地域に合わせて本部が広告を出しています。
つまり、
顧客獲得と供給能力を同時に増やす必要があります。
さらに、誰が作業しても一定品質になるよう、洗濯方法、受け渡し、顧客対応、料金、研修を標準化しなければなりません。
450人の腕の良い洗濯職人を集めたのではない。
普通の人でも一定品質で仕事ができる仕組みを作ったことが重要です。
他人が見落としていたポイント
普通、洗濯事業を大きくしようとすれば、設備を増やそうと考えます。
大型洗濯機を買う。
工場を借りる。
配送車両を増やす。
従業員を雇う。
The Laundry Ladyは違いました。
顧客が増えたとき、設備を買うのではなく「設備をすでに持っている人」を増やしました。
家庭には大量の洗濯機があります。
車もあります。
そして、子育てや介護などでフルタイム勤務は難しいが、平日の数時間なら働ける人もいます。
これらは一つ一つでは事業資産として使われていません。
しかし本部が予約、決済、集客、ブランドを用意すれば、地域に散らばった設備と時間を一つのサービスへ変換できます。
さらにフランチャイズにもしていません。
フランチャイズなら加盟者から大きな加盟金を取り、地域を独占させる方法もあります。
Susan氏は、それでは「子どもの学校時間だけ働きたい」といった人が参加しにくくなると考えました。記事では、同じ地域に10〜20人の作業者がいても、むしろ対応力が高まり成長が速くなると説明しています。
他人は「洗濯工場をどう増やすか」を考えていた。しかし、この事業者は、すでに世の中に存在する家庭用設備と空き時間を、予約システムで一つの供給網にできないかを考えました。
日本ならどう応用できるか
このモデルを日本でそのまま再現することは難しいです。
厚生労働省によると、衣類などを洗剤等で洗濯することを営業として行う場合はクリーニング業法の対象となり、洗濯物の処理はクリーニング所以外で行わせてはならないとされています。クリーニング所には届出や設備基準があり、一般クリーニング所にはクリーニング師の設置も必要です。
つまり、個人の自宅洗濯機を450台束ねるオーストラリア型を、そのまま日本へコピーする発想は適切ではありません。
しかし、事業構造は移植できます。
たとえば、
地域の既存クリーニング店の空き能力を束ねる。
本部は集客、オンライン予約、集配、決済、顧客対応を担当する。
洗濯そのものは許可・届出済みの地域事業者が行う。
という形です。
あるいは洗濯から離れ、
「地域に分散している小規模事業者の余剰能力を、本部が一つの商品として販売する」
という原則を使う。
家事代行、写真撮影、出張メンテナンス、簡易作業などにも応用できます。
7つの勝ち筋フィルター
① 他人が見落としている切り口があるか
評価:★★★★★
需要増に対して設備投資するのではなく、地域に既にある設備と人を供給力として使いました。
資本集約型になりやすい事業を、ネットワーク型に変えています。
② 古くからある市場か
評価:★★★★★
洗濯は極めて古い需要です。
しかも一度終わっても必ずまた発生します。
③ 小さく始められるか
評価:★★★★★
最初は創業者自身が自宅設備で一件から始めています。
全国プラットフォームを作る必要はありません。
④ 在庫を持たずに済むか
評価:★★★★★
商品在庫はありません。
本部に限れば、大型洗濯設備や大量の車両も保有せずに拡大できます。
⑤ ストック収益になるか
評価:★★★★★
洗濯物は毎週発生します。
公式資料では80%超が毎週または隔週の定期利用とされており、問題そのものが繰り返すため継続契約になりやすい事業です。
⑥ 粗利益率は高いか
評価:★★★☆☆
本部は設備負担を抑えられますが、総売上の大部分を実際に作業する業務委託者へ渡します。
したがって手数料率は低めでも、設備投資を抑えて大量の取引を流すことが利益の源泉になります。
⑦ 再現性はあるか
評価:★★★★☆
「本部が需要を集め、地域の個人・事業者へ仕事を配る」という構造自体は多くのサービスへ応用できます。
ただし、国ごとの労働法制、許認可、業務委託者管理などを無視してそのままコピーすることはできません。
どうなったら失敗するのか
最大の死亡条件は、顧客を増やしたのに、仕事を受ける人がいないことです。
予約しても数日待ちになれば、顧客は離れます。
逆に業務委託者だけ大量に集め、仕事が来なければ、稼げないと判断して辞めていきます。
二つ目は、作業品質が人によってばらつくことです。
本部は顧客を持っています。地域の一人のミスでもブランド全体の口コミに影響します。
三つ目は、最初から独自システムへ大金を投入することです。
The Laundry Lady自身も、既製品が使えなくなる規模まで成長してから独自開発へ進みました。
早期に確認したいKPI
見るべき数字は、リピート率、定期契約率、顧客獲得費、1地域あたりの作業者数、作業者1人あたりの週次売上、注文から受注確定までの時間、クレーム率です。
中でも最も重要なのは、
最も重要なKPI=1人の作業者が安定して持てる定期顧客数
です。
一人を採用しても2件しか仕事を渡せなければ、ネットワークは維持できません。
逆に一人参加するたびに安定した顧客を渡せるなら、作業者自身が次の作業者を呼び、供給能力を増やせます。
最初に取り組むアクション
最初に売る最小の商品
対象地域を一つに絞り、
「毎週または隔週の一種類の定期サービス」
だけを販売します。
最初の顧客候補
定期的に同じ作業が発生し、すでに自分や社員の時間を使って処理している家庭や小規模事業者です。
単発利用より、毎週問題が再発する顧客を優先します。
最初の集客方法
広告より先に、地域の供給者を3〜5者確保します。
その対応可能エリアだけで顧客を募集し、Webフォームや既存予約システムで受注します。
投入する費用と時間の上限
2カ月、一地域、供給者5者、顧客30件、外部支出10万円以内。
独自アプリは作りません。
継続または撤退を判断する基準
30件の顧客を獲得し、そのうち15件以上が2回目を利用するかを確認します。
同時に、供給者側が「もっと仕事を受けたい」と思えるだけの週次売上を作れるかを見る。
顧客だけ満足しても、供給者が儲からなければプラットフォームは成立しません。
この事業の本質は、洗濯を代行することではありません。地域に散らばって眠っている設備と人の時間を、本部の集客・予約・決済機能で一つの供給網に変えることです。


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