元記事
記事タイトル
Building a $1.7M/yr tech-enabled consultancy by productizing a repeatable 2-week service
掲載サイト
Indie Hackers
著者
James Fleischmann
創業者
Anthony Pierri氏(FletchPMM)
公開日
2026年4月28日
FletchPMMは、BtoBソフトウェア企業向けに「ポジショニング」を支援するコンサルティング会社です。記事では、500社以上を支援し、前年売上は170万ドル、月間ベースでは約14.2万ドル。正社員4人と複数の外部パートナーで運営していると紹介されています。数字は創業者本人へのインタビューをもとにした申告値であり、第三者による監査済みの数字ではありません。
3分で要約
Anthony Pierri氏は、もともとデザイン、プロダクトマネジメント、ソフトウェア開発などを提供するエージェンシーで働いていました。
そこで問題になっていたのが、何でも受ける受託会社は、毎回仕事の内容が違うことです。
顧客の業種も違う。依頼内容も違う。見積もりも違う。成果物も違う。
これでは案件を取るたびに提案書を作り直し、仕事を取った後も一から進め方を考えなければなりません。当然、マーケティングも標準化できません。
そこでPierri氏らは、「毎回同じ顧客へ、同じ問題を、同じ方法で解決できる商品」を探しました。
LinkedInで複数のテーマについて発信して反応を見た結果、BtoB SaaS企業の「自社が何者なのか、誰向けの商品なのかをうまく説明できない」というポジショニング問題と、ホームページ改善への需要が強いことが分かります。
ここから生まれたのが、現在も販売している2週間のHomepage Positioning Sprintです。
現在の商品内容は極めて明確です。
2週間で、
「4〜6個のポジショニング案」
「社内共有用の6枚の戦略資料」
「そのポジショニングを反映したホームページ構成と完成原稿」
の3つを納品します。現在の公式価格は、年商200万ドル未満の企業が1万ドル、200万〜2,000万ドルが2万ドル、2,000万ドル超が3万ドルです。
つまり、「コンサルタントが何時間働くか」を売っていません。
2週間後に、何が完成しているかを売っています。
これによって、毎回ゼロから見積もる受託ビジネスを、価格表のある商品へ変えました。
主要な収益モデル
この事業を単純化すると、
収益=受注件数×1万〜3万ドル-社員人件費-外部コンサルタント費-営業・コンテンツ制作費-Figma等のツール費-社内システム開発・保守費-その他運営費
となります。
SaaSではないため、顧客が1社増えれば一定の人間の作業も増えます。
しかし普通のコンサルティングとの違いは、案件ごとに業務設計をやり直すコストが小さいことです。
期間は2週間。顧客が事前に提出する資料も決まっている。1週目に3回のワークショップを行い、2週目にホームページ原稿を仕上げる。進行手順まで公式サイト上で公開されています。
同じ作業を繰り返すから、テンプレート、質問項目、判断基準、資料作成方法が蓄積します。
売上がストックになるわけではありません。
しかし、仕事のやり方がストックされるのです。
開始コスト
設備、店舗、商品在庫は必要ありません。
Figma、Zoom、Loomなど既存ツールを使えば始められます。したがって現金投資だけを見れば、小さく始められる事業です。
ただし、本当の参入障壁は専門知識です。
ポジショニングについて顧客より詳しくなければ1万ドルは取れません。
また、FletchPMMの場合は「商品を作ってから集客した」のではありません。LinkedInで発信しながら、どのテーマに需要があるかを先に確認しています。Pierri氏自身も「まずdistributionを作った」と説明しています。
つまり、初期投資はソフトウェア開発費ではなく、専門性と見込み顧客からの信用を作る時間です。
必要スキル
この商売で本当に重要なのは、コンサルティング能力だけではありません。
むしろ難しいのは、
自分が普段やっている仕事から、毎回同じ部分だけを切り出す能力
です。
顧客ごとに違う問題を全部解決しようとすると、商品化できません。
FletchPMMは「マーケティング全部」を請け負いません。
市場調査、広告運用、営業支援、Web制作を全部受けるのではなく、
「誰向けの何の商品なのかを決め、それをホームページで説明できる状態にする」
ところだけを2週間の商品にしています。
専門家として何ができるかより、何をやらないかを決める能力が重要です。
他人が見落としていたポイント
普通、コンサルティング会社が成長するときは、
「もっと大きな案件を取ろう」
「サービスメニューを増やそう」
「顧客ごとに最適な提案をしよう」
と考えます。
FletchPMMは逆です。
仕事を減らしました。
対象顧客をBtoBソフトウェア企業に絞る。
扱う問題をポジショニングに絞る。
期間を2週間に絞る。
成果物も3種類に絞る。
すると、売る側だけでなく買う側も楽になります。
通常のコンサルティングは、問い合わせなければ価格も期間も完成物も分かりません。
FletchPMMなら、
「2週間、これが完成して、価格はいくら」
まで契約前に分かります。
不確実性を減らしたこと自体が商品価値なのです。
さらに価格の付け方も面白い。
同じ2週間の商品でも、企業規模によって1万、2万、3万ドルと価格を変えています。公式サイトでは、企業が大きいほど複雑性と成果のインパクトが大きくなることを価格差の理由としています。
他人は「コンサルタントの時間」を売っていた。しかし、この事業者は、顧客が抱える一つの問題を、期間と成果物まで固定したパッケージへ変えることで、専門家の仕事そのものを商品にしました。
日本ならどう応用できるか
この構造はマーケティング以外にも使えます。
たとえば、
経理なら「月次決算10営業日化診断」。
採用なら「求人票・採用導線2週間改善」。
飲食店なら「原価率改善診断」。
ホテルなら「公式サイト予約導線改善」。
中小企業のITなら「Excel業務廃止候補診断」。
重要なのは「経営コンサルティングをします」のように広く売らないことです。
一つの顧客、一つの問題、一つの期間、一つの成果物
まで狭めます。
たとえば、
「2週間で経費精算業務を調査し、廃止できる作業一覧、改善後フロー、導入候補ツール3つを納品します」
まで決めれば、受託仕事が商品に近づきます。
最初からSaaSを作る必要もありません。
10社へ同じサービスを提供し、本当に毎回同じ質問、同じ分析、同じ成果物が出てくると分かってから、自動化すればいいのです。
7つの勝ち筋フィルター
① 他人が見落としている切り口があるか
評価:★★★★★
専門家の能力を広く売るのではなく、その中の一工程だけを固定商品にしています。
「何でもできる」を捨てたことが差別化です。
② 古くからある市場か
評価:★★★★★
コンサルティング、Web改善、マーケティング戦略には以前から企業が予算を使っています。
新しい需要を教育する必要はありません。
③ 小さく始められるか
評価:★★★★★
最初は一人で一つの商品を販売できます。
在庫も専用システムも不要で、売れることを確認してから人を増やせます。
④ 在庫を持たずに済むか
評価:★★★★★
物理在庫はありません。
売れなかった場合の現金損失も比較的小さくできます。
⑤ ストック収益になるか
評価:★★☆☆☆
ここは弱点です。
基本は2週間の単発案件なので、契約が終われば売上も終わります。
一方で、テンプレート、事例、ブランド、集客コンテンツ、診断ノウハウは資産として蓄積します。
⑥ 粗利益率は高いか
評価:★★★★☆
仕入原価は小さいものの、人件費が主要原価です。
標準化が進み、創業者以外でも同じ品質で案件を回せるほど利益率は改善します。
⑦ 再現性はあるか
評価:★★★★☆
専門サービスを「固定期間+固定成果物+固定価格」に変える構造は多くの業種へ移せます。
ただし、FletchPMM自身も創業者の知名度への依存を課題として挙げており、外部コンサルタントへ仕事を移す取り組みを進めています。
どうなったら失敗するのか
最大の死亡条件は、商品化したはずなのに特注を受け始めることです。
「この会社だけ営業資料も作ります」
「今回は3週間やります」
「この顧客だけ調査範囲を広げます」
が増えると、結局普通の受託会社へ戻ります。
二つ目は、創業者にしか提供できないことです。
年商170万ドルになっても創業者本人がすべての案件を担当していれば、事業の上限は創業者の時間になります。FletchPMM自身も現在、創業者が担当するスプリント数を減らし、チームへ移管することを課題にしています。
三つ目は、成果物を固定しただけで顧客価値が固定されていないことです。
資料を3つ納品した、では弱い。
顧客が「この2週間でこの問題が解決した」と認識できる必要があります。
早期に確認したいKPI
見るべきなのは、商談成約率、平均販売単価、1案件あたり作業時間、案件粗利益率、紹介率、標準工程から外れた案件割合、創業者以外が担当できた割合です。
中でも重要なのは、
最も重要なKPI=1案件あたり標準工数
です。
売上2万ドルでも毎回300時間かかるなら、商品化できていません。
10件、20件と販売するほど工数が安定し、下がっていくなら、知識が仕組みに変わっています。
最初に取り組むアクション
最初に売る最小の商品
普段行っている専門業務から、一番頻繁に繰り返している問題を一つ選びます。
そして、
「2週間で○○を診断し、△△を3点納品する」
まで固定します。
最初の顧客候補
すでにその問題へ外注費や社員の時間を使っている企業です。
「あると便利」ではなく、「現在お金か時間を失っている」会社を狙います。
最初の集客方法
広告ではなく、見込み顧客10社へ直接ヒアリングします。
同じ悩みが複数社から出たら、その問題だけを解決する固定価格の商品として提案します。
投入する費用と時間の上限
6週間、10社ヒアリング、3社への有料提案、外部支出5万円以内。
専用システムやSaaSは作りません。
継続または撤退を判断する基準
3社以上へ同じ商品を提供し、成果物の70%以上を同じ手順・テンプレートで作れるかを確認します。
毎回内容が大きく変わるなら、まだ商品として切り出す範囲が広すぎます。
逆に、同じ質問をして、同じ工程を通り、同じ形式の成果物を高単価で売れるなら、そのサービスは「受託」から「商品」へ変わり始めています。
この事業の本質は、2週間のマーケティングコンサルを売ることではありません。専門家の仕事から繰り返し可能な部分だけを切り出し、「誰に・何を・何日で・いくらで」を固定することで、人の能力を商品へ変えることです。


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