元記事
記事タイトル
The $2k/Month Mushroom Side Hustle That Bought a 70-Acre Farm
掲載サイト
Side Hustle Nation / The Side Hustle Show Episode 753
著者・出演者・創業者
Nick Loper / Kyle Beaver氏(Ten Mile Mushrooms)
公開・更新日
2026年8月6日
元記事URL
Side Hustle Nation「The $2k/Month Mushroom Side Hustle That Bought a 70-Acre Farm」
Kyle Beaver氏は、約300ドルから高級キノコの栽培を始め、Ten Mile Mushroomsを数十万ドル規模の事業へ育てました。現在はヒラタケ、ライオンズメイン、霊芝などの栽培だけでなく、栽培ブロック、栽培キット、農家向け商品なども販売しています。
売上や収益性などは本人へのインタビューをもとにした数字であり、第三者による監査済みの数値ではありません。またSide Hustle Nationにはスポンサーやアフィリエイトなどの商業的な導線があります。
3分で要約
Kyle氏は、もともと農業をやりたかったわけではありません。
以前はペンシルベニア州のイベントを回り、フードトラックでプレッツェルを売っていました。そこで、客が3時間運転してでも買いに来るようなニッチ商品には強い需要があることを知ります。
一方、大きな店舗や土地を必要とする事業は避けたかった。
そこで探した条件が、
狭い場所でできる。
高単価で売れる。
近隣に競合が少ない。
というものでした。
Googleで「狭い場所でできるビジネス」を探していて見つけたのがキノコ栽培です。英国のサイトに掲載されていた「1平方メートル当たり年間いくら売上を作れるか」という数字に反応し、地元のファーマーズマーケットも調査すると、高級キノコを売っている競合がほぼいませんでした。
そこで約300ドルを使い、余っていた一部屋でヒラタケ栽培を開始します。
最初から農地も大型設備も買いません。
藁、ポリチューブ、菌など最低限の資材だけ。販売用のテントやテーブルなども200〜300ドル程度でした。本人も、本格的な栽培室を作る前に、クローゼットや空き部屋で数回育ててみることを勧めています。
ここからファーマーズマーケット、レストラン卸、加工品へ広げました。
しかし、本当の転換点は数年後です。
別の農家から、
「収穫できる状態の栽培ブロックをまとめて売ってほしい」
と言われました。
試してみると、生キノコを売るより栽培ブロックのほうが儲かる。
現在は、小規模農家向けに栽培ブロックを全米へ発送しています。
つまり、
キノコを育てて売る
→キノコを育てる人へ売る
へ事業が変わったのです。
「農業」ではなく、面積当たり粗利を見る
この事例でまず面白いのは、土地面積当たりの生産性です。
元記事で紹介されている栽培テントは、わずか4平方フィート。それでも2週間で約16ポンドを生産するとされています。
販売価格は、ファーマーズマーケットなら1ポンド24〜30ドル。レストラン卸なら10〜12ドル程度です。
さらに約10ドルの栽培ブロックから2〜4ポンド収穫でき、小売価格では60〜80ドル程度の売上になる例が紹介されています。記事では商品原価ベースの粗利率を75%超としています。
もちろん、人件費、電気、設備、廃棄まで引いた営業利益率が75%という意味ではありません。
それでも、一般的な露地農業のような、
広い土地×大量生産×低単価
とはかなり違います。
狭い空間×短い生産サイクル×高単価
です。
その意味では、農業というより温湿度を管理した小規模製造業として見たほうが、事業構造を理解しやすいでしょう。
主要な収益モデル
現在の事業を単純化すると、
収益=生キノコ小売+レストラン卸+乾燥・加工品売上+栽培ブロック販売+栽培キット・定期商品+教育関連売上+宿泊収入-培地・菌等の原材料費-人件費-温湿度管理・電気代-設備費-包装費-物流費-販売手数料-廃棄ロス-土地建物関連費
となります。
初期は、生キノコを作って売るだけでした。
しかし、生鮮品には弱点があります。
鮮度が落ちる。
売れなければ廃棄になる。
遠距離へ送りにくい。
そこで乾燥品や加工品へ広げ、さらに栽培ブロックへ進みました。
元記事では、45ドル程度の加工商品に続き、栽培ブロックが生キノコ以上に高収益の商品になったと紹介されています。
特に栽培ブロックには、生鮮キノコにはない利点があります。
全国へ発送できる。
相手が農家なので継続購入が期待できる。
そして何より、
キノコ農家が増えるほど、栽培ブロックの顧客候補も増える。
競合増加を需要増加へ変えています。
開始コスト
Kyle氏の実際の開始費用は約300ドル。
本格的に販売するためのファーマーズマーケット設備まで含めても、初期段階では数百ドル程度でした。
ここで重要なのは、300ドルという絶対額ではありません。
設備投資の順番です。
農場を作る。
↓
栽培する。
↓
売れるか確認する。
ではありません。
空き部屋で作る。
↓
売る。
↓
売れる量に合わせて設備を増やす。
という順番です。
農業は設備を買ってから需要確認する事業になりやすい。
この順番を逆にしています。
必要スキル
もちろん栽培技術は必要です。
温湿度、衛生管理、雑菌、収穫タイミングなど、品質を一定にする製造能力が欠かせません。
ただしKyle氏が強調しているのは、育てること以上に売ることです。
どのキノコなら地域で高く売れるのか。
ファーマーズマーケットでは何を見せれば客が止まるのか。
レストランなら毎週何kg買うのか。
小売24〜30ドルと卸売10〜12ドルをどう組み合わせるのか。
そして、生キノコより儲かる商品を顧客から教えられたとき、事業モデルを変えられるか。
栽培技術より、「どの商品として売るか」を変える能力のほうが、最終的な事業規模を左右しています。
他人が見落としていたポイント
他人は「どんな農作物を育てるか」を考えます。
Kyle氏が見ていたのは、
限られた場所から、いくら粗利益を作れるか
でした。
だから土地がないことは、キノコ栽培では大きな弱点になりませんでした。
そして、さらに重要なのが栽培ブロックです。
普通なら、近隣でキノコ農家が増えれば競合と考えます。
しかし栽培ブロックを売れば、その農家は顧客になります。
完成品市場で競争するのではなく、その市場へ参入する人に部品を売る。
金鉱で金を掘るのではなく、ツルハシを売るモデルです。
さらに、生キノコを栽培ブロックへ変えたことで、地理的な制約まで外れました。
生鮮品は地元で売る。
栽培資材は全国へ売る。
商品を変えたことで、商圏まで変えています。
他人は「高級キノコ」という商品を見ていた。しかし、この事業者は「狭い場所でも高い粗利を生み、その市場へ参入する生産者にも売れる供給不足」を見ていました。
小さな売上が「信用資産」に変わった
もう一つ興味深いのが、事業の売上が土地取得につながったことです。
元記事ではKyle氏が、年間1,000ドル以上の農産物売上を作り、農業法人として実績を積み、3年間の税務記録を経てUSDAの融資制度を利用した経緯を説明しています。その融資で8,000平方フィートの倉庫と70エーカーの土地を取得し、本人のローン条件は約3%、月返済約1,900ドルだったとされています。
ただし、「年間1,000ドル売れば誰でも融資を受けられる」という制度ではありません。
USDAのFarm Service Agency公式情報では、Farm Ownership Loanには農場経営の経験・訓練、返済能力などの審査があり、Beginning Farmerについても「農場経営10年以下」「一定以上の農地を既に所有していない」「実際に経営へ参加する」など複数の条件があります。Direct Farm Ownership Loanの上限は現在60万ドルです。
したがって、ここから抽出すべき原則は米国の融資制度そのものではありません。
小さな副業でも、売上・利益・納税実績を積めば、将来より大きな資産を取得するための信用になる
という点です。
Kyle氏はさらに、その土地へトレーラーやアパート、キャビンなどの宿泊機能を加え、月数件の予約で約1,900ドルの返済額をカバーできると説明しています。
キノコで土地を買い、土地にも返済資金を稼がせています。
日本ならどう応用できるか
日本でそのままライオンズメインを栽培する必要はありません。
持ち帰るべきなのは、
「狭い場所で作れ、通常流通では不足していて、プロが高単価で継続購入するものを探す」
という条件です。
たとえば高単価レストラン、ホテル、専門飲食店へ、
「珍しい食材に興味がありますか」
と聞いても弱い。
聞くべきなのは、
「定期的に使いたいのに、安定して仕入れられない食材は何ですか」
です。
特殊キノコ、マイクログリーン、エディブルフラワーなどに同じ回答が複数店から出たら、初めて小規模生産を試します。
作ってから営業するのではありません。
需要を聞いてから作る。
さらに、将来的に同じ食材を作りたい生産者が増えたら、競合と考えず、苗、培地、半製品、栽培資材、マニュアルなどを売れないかを考えます。
なお、日本でキノコを「健康に良い」「○○の機能がある」などと訴求する場合には食品表示に注意が必要です。消費者庁は、保健機能食品以外の一般食品について、健康維持・増進に関する機能を表示することはできないとしています。機能性表示食品として機能を表示する場合も、科学的根拠などを販売前に届け出て、事業者の責任で適切に表示する制度です。
したがって、最初の検証では健康効能ではなく、味、希少性、料理用途、鮮度で売れるかを見るほうが安全です。
7つの勝ち筋フィルター
① 他人が見落としている切り口があるか
評価:★★★★★
一般的な野菜ではなく、「面積当たり売上が高く、地域供給が少ないもの」から逆算しています。
さらに、後には競合農家を栽培ブロックの顧客へ変えました。
② 古くからある市場か
評価:★★★★★
食品、飲食店仕入れ、農産物という古い市場です。
新しい需要をゼロから教育する必要がありません。
③ 小さく始められるか
評価:★★★★★
実例では約300ドル、空き部屋から開始しています。
本格設備を作る前に、栽培と販売の両方を試せます。
④ 在庫を持たずに済むか
評価:★★☆☆☆
ここは弱点です。
培地、菌、栽培中の商品を抱え、生キノコは鮮度も落ちます。
作りすぎれば廃棄につながります。
⑤ ストック収益になるか
評価:★★★★☆
生キノコ単体は都度販売ですが、レストランへの定期卸、農家への栽培ブロック供給、定期型の商品へ進めば継続収益化できます。
顧客が「毎週育てる」側になるBtoB資材は特に強い構造です。
⑥ 粗利益率は高いか
評価:★★★★★
元記事では、約10ドルの栽培ブロックから60〜80ドルの小売売上を作れる例を挙げ、商品原価ベースの粗利率を75%超としています。
ただし、人件費、電気、設備、物流、廃棄まで含めた最終利益とは分けて考える必要があります。
⑦ 再現性はあるか
評価:★★★★☆
小規模栽培→直接販売→安定需要確認→設備拡張という順番は再現できます。
一方、温湿度管理、雑菌対策、販売力が必要で、栽培できれば自動的に売れる事業ではありません。
どうなったら失敗するのか
最大の死亡条件は、作れる量を基準に設備投資することです。
月100kg作れるから100kg作る。
しかし売れるのは50kg。
残りは廃棄です。
設備稼働率を上げるほど赤字が増える可能性があります。
二つ目は、小売価格だけを見て収益計算することです。
ファーマーズマーケットでは1ポンド24〜30ドルでも、卸売では10〜12ドル程度。すべてを小売できるとは限りません。
三つ目は、生キノコに固執することです。
この事例では、顧客から「栽培ブロックを売ってほしい」と言われたことが大きな転換点でした。
「自分はキノコ農家だから」と断っていたら、全国市場へ進む機会を失っていました。
早期に確認したいKPI
確認したいのは、1㎡当たり収穫量、1㎡当たり売上、商品原価率、廃棄率、小売と卸の販売比率、継続購入率、1店舗当たり週次購入量です。
特に重要なのは、
最も重要なKPI=1㎡当たり年間粗利益
です。
高く売れても、一度の収穫に長い時間がかかり、設備を占有するなら効率は落ちます。
逆に狭い場所を短期間で何度も回し、高粗利の商品を売れるなら、小規模でも事業になります。
最初に取り組むアクション
最初に売る最小の商品
最初から農場を作りません。
一種類の高単価食材を、数kgだけ試験生産するところまでにします。
最初の顧客候補
高単価レストラン、ホテル、専門料理店などで、珍しい食材を「一度買ってみたい」のではなく、継続的に使う可能性のある料理人です。
最初の集客方法
栽培前に10〜20店舗へ直接ヒアリングします。
聞くのは、
「毎週買いたいのに、安定して仕入れられない食材はありますか」
です。
同じ回答が複数店舗から出た商品だけを試します。
投入する費用と時間の上限
2カ月、20店舗ヒアリング、小規模生産5万円以内。
大型栽培室、農地、専用倉庫は用意しません。
継続または撤退を判断する基準
生産前に、具体的な購入意思を示す店舗が3店以上あること。
試験販売後は、原材料、電気、包装、配送、廃棄を引いた粗利益率が50%以上残り、3カ月以内に3店舗以上が継続購入するかを確認します。
満たさなければ設備を増やさず、品種か販売先を変えます。
そして、同じ商品を作りたい生産者から問い合わせが出始めたら、その瞬間が次の事業を考えるタイミングです。
完成品を増産するだけでなく、
「作る人に何を売れるか」
を見る。
この事業の本質は、キノコを育てることではありません。狭い市場の供給不足へ小さく入り、顧客が教えてくれる「より粗利が高く、より広く売れる川上の商品」へ事業を移していくことです。


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