元記事
記事タイトル
How I grew Software Ideas to $6k MRR in three months
掲載サイト
Indie Hackers
著者・創業者
Kevin Conti
公開日
2020年10月7日
元記事URL
https://www.indiehackers.com/post/how-i-grew-software-ideas-to-6k-mrr-in-three-months-4b6598f378
Software Ideasは、ソフトウェア事業を始めたい人に対して、調査済みの事業アイデアを届ける有料ニュースレターです。
Kevin Contiによると、公開から約3か月で月間継続収益6,019ドル、有料顧客318人、無料メール登録者3,300人に達しました。約4か月後の取材では月間継続収益約8,000ドル、公開145日後には月間継続収益1万ドルを超えたと報告されています。いずれも創業者本人が公開した数字であり、監査済みとは限りません。
公式サイトは現在も公開され、過去102号分のニュースレターがアーカイブされています。ただし、現在の売上や有料会員数は確認できないため、本記事では主に2020年当時の成長事例として扱います。
3分で要約
Kevinが販売したのは、ソフトウェアそのものではありません。
「次にどんなソフトウェアを作れば売れる可能性があるか」という調査結果です。
ソフトウェア事業を始めたい人は多くても、実際に何を作るかを決めるのは簡単ではありません。
市場があるのか。
競合が強すぎないか。
顧客は何に不満を持っているのか。
どのような機能なら料金を払うのか。
どうやって最初の顧客を集めるのか。
こうした調査を一から行うには、何日もかかります。
Kevinは、既存のソフトウェア市場、利用者の不満、検索需要、競合サービスなどを調べ、毎週、事業アイデアとしてまとめました。
単に、
このアプリを作るとよい
と提案するのではありません。
どのような顧客を狙うか、既存サービスには何が不足しているか、どの機能から始めるか、どのように販売するかまで整理して届けました。
利用者が買っていたのは、思いつきではありません。
何週間も市場を探し回る時間を短縮し、開発前の失敗確率を少し下げるための調査です。
主要な収益モデル
Software Ideasの中心収益は、有料ニュースレターの購読料です。
最初の料金は3か月57ドル、月額換算では19ドルでした。Kevinは、正式に作り込む前に約200ドル分を先行販売し、実際に料金を払う人がいることを確認してから本格的に始めています。
収益構造は、次のように分解できます。
収益=有料購読者数×購読単価-市場調査に使う作業時間-調査ツール利用料-メール配信費-会員サイト運営費-決済手数料-問い合わせ対応費
売上の中心は、購読者数と単価です。
経費の中心は、毎週の調査に使う時間です。
ニュースレターは、読者が増えても同じ記事を一斉配信できます。そのため、有料購読者が100人から500人になっても、原稿を書く時間が5倍になるわけではありません。
一方で、毎週新しい調査を続けなければ商品価値が下がります。
過去の記事を販売するだけなら資産型ですが、毎週新しい号を出す部分には継続的な労働が必要です。
Kevinは、無料メール読者を集め、その中から有料購読へ移行してもらう仕組みを重視していました。2023年の取材でも、有料会員の主要な獲得経路は無料メールリストであり、公式サイトでは有料登録より無料登録への導線を多く配置していたと説明しています。
開始コスト
開始時点で、大規模なシステム開発は必要ありません。
最低限必要なのは、
- 市場を調べる方法
- 原稿を書く環境
- メール配信
- 決済
- 過去記事を読める会員ページ
です。
Kevinは、Mailchimpでメールを送り、Stripeで決済を受け、自作した会員サイトに過去記事を保存していました。本人は、やり直すならGhostのような既存サービスも検討すると話しています。
つまり、最初から独自システムを作る必要はありません。
noteのメンバーシップ、有料メール、決済フォーム、Googleドライブなどを組み合わせても検証できます。
最大の開始コストは、システムではなく調査時間です。
必要スキル
最も重要なのは、面白いアイデアを思いつく力ではありません。
公開情報から、顧客が実際にお金を払っている問題を見つける力です。
たとえば、
- 競合サービスの料金
- 利用者レビューの不満
- 検索されている言葉
- 求人情報
- 業界掲示板の相談
- 既存サービスの機能不足
- 手作業で処理されている業務
などを調べます。
その上で、
この市場は伸びている
という一般論ではなく、
どの顧客が、現在どの方法で解決し、何に不満を感じ、いくらなら払うか
まで具体化する必要があります。
もう一つ必要なのが、調査結果を行動できる形へ編集する力です。
情報を大量に集めても、結論が曖昧なら読者は動けません。
他人が見落としていたポイント
他人は、ソフトウェア事業で稼ぐには、自分でソフトウェアを作る必要があると考えていました。
しかしKevinは、ソフトウェアを作りたい人が、その前段階で困っていることを見ていました。
開発者はコードを書けても、何を作るべきか決められるとは限りません。
実際には、開発より市場選びで失敗することも多い。
数か月かけて商品を作った後に、
- 顧客がいない
- 無料サービスで十分だった
- 強い競合がいた
- 集客方法がなかった
と分かります。
Kevinは、開発そのものではなく、開発前の調査を商品にしました。
顧客が買っていたのは、事業アイデアの一覧ではありません。
自分で市場を探し、競合を調べ、レビューを読み、仮説を整理する時間の短縮です。
日本ならどう応用できるか
日本で「起業アイデアを毎週送る」という広い商品を作っても、無料記事や生成AIとの差が出にくいでしょう。
重要なのは、対象となる業界や職種を狭くすることです。
たとえば、
- 建設業界に特化した新規事業調査
- 飲食店向けの集客・省人化アイデア
- 不動産会社向けの業務改善テーマ
- 士業事務所向けの小型サービス案
- 地方企業向けの人手不足対策
- 特定業界で海外に広がっている新サービス
などが考えられます。
単なるアイデア一覧では、有料商品にはなりません。
読者が知りたいのは、「面白そうな事業」ではなく、実際に検討できるだけの材料です。
そのため、各事例について、
- どのような顧客が困っているのか
- 現在はどのような方法で解決しているのか
- その方法に、どれほどの費用や手間がかかっているのか
- 既存の商品やサービスには何が不足しているのか
- 最初にどのような小さな商品を売ればよいのか
- 売上と経費を分解すると、利益が残る構造になるか
- どの数字を基準に継続や撤退を判断するか
まで調べます。
調査対象を狭くするほど、一般的な生成AIでは出しにくい情報になります。
業界特有の商習慣、既存サービスの料金、顧客の不満、実際の業務手順まで含めて整理できれば、単なる読み物ではなく、事業開発や業務改善に使える調査商品になります。
5つの勝ち筋フィルター
① 中央値か、外れ値か
評価:★★★★☆
有料ニュースレター自体は珍しくありません。
しかし、ニュースや解説ではなく、開発者向けの事業機会調査を定期商品にした点が外れ値です。
② 古くからある市場か
評価:★★★★★
企業は以前から、市場調査、コンサルティング、調査レポートへ費用を払っています。
Software Ideasは、その一部を個人開発者でも買える低価格商品へ変えました。
③ 期待値1以上のサイコロを何度も振れるか
評価:★★★★★
最初は1本の調査レポートを先行販売するだけで検証できます。
対象業界、価格、配信頻度、レポート形式を変えながら、低コストで何度も試せます。
Kevinも本格開発の前に先行販売を行い、需要を確認しています。
④ 粗利益率は高いか
評価:★★★★★
一度作った調査レポートを、複数の購読者へ同時に販売できます。
購読者が増えても、原稿作成時間は同じ割合では増えません。
ただし、質の高い調査を毎週続けるには、創業者本人の時間が必要です。
⑤ 再現性はあるか
評価:★★★★☆
特定業界に詳しく、情報源と評価基準を持っている人なら再現できます。
一方、生成AIで一般的な事業アイデアを大量に作るだけでは、有料商品になりません。
実際の市場、顧客、競合、価格まで調べた一次調査が必要です。
どうなったら失敗するのか
最大の死亡条件は、読者が「面白かった」で終わることです。
事業アイデアを読んでも、誰も実際に調査、顧客ヒアリング、開発へ進まなければ、継続課金の理由が弱くなります。
次に危険なのが、毎週新しいアイデアを出すこと自体を目的にすることです。
本当に有望な市場が毎週見つかるとは限りません。
数を埋めるために調査が浅くなれば、無料のAI回答との差がなくなります。
また、調査に時間をかけすぎると、購読料以上に自分の労働時間を使います。
盗用、情報の陳腐化、読者同士が同じ市場へ参入する問題にも注意が必要です。
早期に確認したいKPI
確認すべき数字は、無料登録者数、有料転換率、継続率、解約率、1号当たりの制作時間、読了率です。
特に重要なKPIは、紹介したアイデアをもとに、読者が実際に顧客ヒアリングや先行販売を行った割合です。
読まれるだけでなく、行動につながっているかを確認します。
最初に取り組むアクション
最初に売る最小の商品
特定業界の事業機会を一つ調査し、10ページ程度のレポートにします。
たとえば、
多店舗企業で人力のまま残っている、定期巡回・差分確認業務10選
という内容です。
最初の顧客候補
その業界で新規事業、営業企画、業務改善を担当している人です。
起業したい一般人ではなく、実際に顧客や業務へアクセスできる人を狙います。
最初の集客方法
レポートの目次と1事例だけを無料公開し、完全版を先行販売します。
料金は980〜2,980円程度で試します。
投入する費用と時間の上限
最初の調査期間は2週間、制作時間は20時間以内、費用は1万円以内にします。
会員サイトや独自システムは作りません。
継続または撤退を判断する基準
最初のレポートを10人以上が購入し、そのうち3人以上が次回も購入したいと回答すれば継続します。
収益構造は、次の式で確認します。
収益=有料購読者数×購読単価-調査時間の評価額-情報取得費-配信システム費-決済手数料-顧客対応費
調査に20時間かけ、売上が数千円しかなければ、資産型事業にはなっていません。
この事業の本質は、起業アイデアを思いつくことではありません。顧客が自分で行うと何日もかかる市場調査を、意思決定に使える形へ整理し、複数人へ繰り返し販売することです。


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