Microsoft製品の「面倒な設定作業」だけを自動化し、年商100万ドルを超えた小さなSaaS

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元記事

記事タイトル
Carving out a $1M+/yr niche out of the Microsoft ecosystem

掲載サイト
Indie Hackers

著者
James Fleischmann

出演者
Thomas Mahony氏(Pckgr創業者)

公開日
2026年7月14日

元記事URL
https://www.indiehackers.com/post/ekxDn4Rdn8zD3uZU2asY

記事内では、Pckgrの売上は月約8万3,000ドル、年間継続収益は100万ドル超と紹介されています。これらは創業者への取材をもとにした数字であり、第三者による監査済みとは限りません。また、記事は成功事例を中心に構成されているため、開発期間、人件費、解約率などの詳細は十分に開示されていません。

3分で要約

Pckgrは、企業のIT担当者がWindowsパソコンへソフトウェアを配布し、更新する作業を自動化するサービスです。

創業者のThomas Mahony氏は、ITサポート会社やコンサルティング会社で働き、Microsoft Intuneを使った端末管理に携わっていました。

Intuneは、社内のパソコンへソフトウェアを配布したり、設定を管理したりできるMicrosoftのサービスです。しかし、Google Chromeなどの一般的なソフトを配布するだけでも、Intuneで扱える形式へ変換し、設定し、テストする作業が必要でした。

Thomas氏は、この「アプリケーションのパッケージ化」に多くの時間がかかることへ不満を感じていました。インターネット上の掲示板を調べると、同じ問題に悩むIT担当者が多数いる一方、既存サービスは小規模企業には高額すぎることが分かりました。

そこで作ったのがPckgrです。

利用者はPckgrをMicrosoft Intuneへ接続し、配布したいソフトを選びます。すると、Pckgrが必要な変換や設定を自動で行います。

従来は、専門知識を持つ担当者がコマンドや設定ファイルを扱う必要がありました。それを、

接続する
ソフトを選ぶ
配布する

という操作へ簡略化しました。

最初は副業として、Thomas氏がほぼ一人で開発しました。フロント部分にはノーコード開発ツールのBubble、処理にはGitHub Actions、Microsoft Azureなどを組み合わせています。

完全な独自開発にこだわらず、既存サービスを接続することで、開発費を抑えながら製品を作りました。

当初は無料で公開し、実際の企業環境で使ってもらいました。利用者から不具合や要望を集め、重要な問題を修正した後、月額25ドルの有料プランを導入します。

最初の有料顧客が現れた時点で、「面倒なだけでなく、お金を払ってでも解決したい問題」であることが確認できました。

その後、機能と顧客規模に応じてプランを増やし、値上げも実施。現在は小規模なIT部門から、10万台以上の端末を管理する組織まで利用し、年間継続収益は100万ドルを超えています。

主要な収益モデル

中心となるのは月額課金です。

基本式は、

月額料金× 契約企業数− クラウド利用料− 開発・サポート費

となります。

この仕事が継続課金に向いているのは、ソフトウェア配布が一度きりではないからです。

新しいソフトを導入する。
既存ソフトを更新する。
古いバージョンを削除する。
セキュリティ上の問題へ対応する。

企業がパソコンを使い続ける限り、管理作業は繰り返し発生します。

Pckgrは現在、Starter、Pro、Business、Customの4段階で提供され、企業規模や必要機能に応じて料金を変えています。創業者は値上げが成長へ大きく貢献したと説明しています。

開始コストと必要スキル

店舗や在庫は不要です。

初期の主な費用は、クラウドサービス、ドメイン、開発ツールなどです。無料枠のあるサービスを活用し、自己資金で開発を続けました。

ただし、この事例の参入障壁はお金ではありません。

重要なのは、Microsoft Intuneの実務経験です。

Thomas氏は、ソフトウェア配布でどこに失敗が起きるか、IT担当者が何を面倒と感じるか、完成品に何を期待するかを理解していました。

必要なのは、単にプログラムを書けることではなく、

  • 特定業務を深く理解する
  • 例外処理を洗い出す
  • 顧客環境で安全に動作させる
  • 継続的な更新へ対応する
  • 企業のセキュリティ要求を満たす

といった能力です。

他人が見落としていたポイント

多くの人は、この事例を「Microsoft向けの便利なソフトを作った話」と見ます。

しかし、本当に重要なのは、Microsoftの大きな市場へ正面から競争を挑まなかったことです。

Microsoftは、企業の端末を管理する大きな仕組みを提供しています。

ただし、大企業向けの汎用製品は、すべての細かい作業を使いやすく解決できるわけではありません。

利用者は、製品を導入した後も、設定、変換、確認、更新といった手作業を続けています。

Pckgrは新しい市場を作ったのではありません。

巨大な製品の中に残された、狭くて面倒な一工程だけを抜き出しました。

さらに、既存の高額製品と同じ機能をすべて作ろうとせず、小規模なIT部門でも使える範囲へ機能を絞りました。

他人は、Microsoftと競争する製品を考えていました。

しかし、この事業者は、Microsoft製品を使う人が毎日繰り返している面倒を見ていました。

日本ならどう応用できるか

この考え方は、Microsoft製品に限りません。

企業がすでに使っている大きなシステムの周辺には、手作業で補われている工程が残っています。

例えば、

  • 会計ソフトへ取り込むデータの整形
  • 勤怠システムと給与計算の照合
  • ECサイトの商品登録
  • 不動産管理システムへの物件登録
  • 建設システム間のデータ移行
  • ホテル予約サイトの料金更新
  • 補助金や許認可の期限管理

などです。

狙うべきなのは、新しい業務を覚えてもらうサービスではありません。

すでに毎週、毎月行われている作業の中から、

ミスが起きやすい
時間がかかる
既存システムでは解決されない
外注すると高い

という工程を探します。

最初からSaaSを作らず、手作業や簡単な自動化で代行し、複数社で同じ問題が確認できてから製品化する方法もあります。

5つの勝ち筋フィルター

① 中央値か、外れ値か

評価:★★★★★

一般的な業務管理SaaSではなく、Intuneのソフトウェア配布という非常に狭い工程へ絞っています。

市場全体は大きくなくても、利用者が明確で、困りごとの強い外れ値型の事業です。

② 古くからある市場か

評価:★★★★★

企業の端末管理やソフトウェア更新は、以前から存在する業務です。

顧客へ必要性を教育する必要はありません。すでに人件費と時間を使っている工程を置き換えています。

③ 期待値1以上のサイコロを何度も振れるか

評価:★★★★☆

小さな試作品を無料公開し、専門コミュニティで反応を確認できます。売れなければ、対象ソフトや機能を変えて試せます。

一方で、企業の端末管理に接続するため、セキュリティ事故や動作不良の責任は軽くありません。開発費は小さくできても、技術検証を省略できる事業ではありません。

④ 粗利益率は高いか

評価:★★★★★

SaaSなので、顧客が増えても同じ製品を提供できます。

クラウド費用やサポートは増えますが、個別受託より売上を拡大しやすい構造です。

ただし、対応するアプリを増やすほど、検証と保守の負担も増えます。

⑤ 再現性はあるか

評価:★★★★☆

販売、契約、利用開始は自動化できます。

一方、製品を作るまでには、特定業務への深い理解と、多数の例外処理の蓄積が必要です。

単に似た画面を作るだけでは再現できません。

どうなったら失敗するのか

最大の失敗条件は、大手製品と同じ機能を広く作ろうとすることです。

顧客の要望をすべて追加すれば、開発と保守が複雑になり、少人数で運営できなくなります。

もう一つのリスクは、Microsoftが同じ機能を標準搭載することです。

実際、Pckgrの公開直前にMicrosoftが類似サービスを発表し、Thomas氏は開発中止を考えました。それでも、価格、使いやすさ、小規模企業向けの設計で差を残せると判断し、公開しています。

大手企業の周辺で事業をする以上、APIや料金、製品方針の変更にも左右されます。

早期に確認したいKPI

確認したいのは、無料利用から有料契約への転換率、月次解約率、自動化によって削減できた作業時間、アプリごとのエラー率です。

特に重要なのは、機能数ではなく、

顧客が毎月どれだけ作業時間と失敗を減らせたか

です。

最初に取り組むアクション

最初の商品は、一つの業務、一つのシステム、一つの処理だけに絞ります。

例えば「特定の販売管理ソフトから会計ソフトへ取り込めるCSVを自動生成する」といった小さな機能です。

最初の顧客候補は、そのシステムを日常的に使う担当者や支援会社です。掲示板、ユーザーコミュニティ、SNSなどで、同じ不満が繰り返し投稿されているかを確認します。

検証期間は30日、費用は5万円以内とし、最初は手動処理を含んでも構いません。

3社以上が試し、1社以上が月額料金を払う意思を示せば開発を続けます。反応が弱ければ機能を増やさず、別の面倒な工程を探します。

この事業の本質は、新しい業務システムを作ることではありません。

巨大な既存製品の中に残された、狭く、繰り返され、誰も改善していない作業を自動化することです。


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