元記事
記事タイトル
How Building My Own WordPress Solution Evolved into $24K MRR
掲載サイト
Indie Hackers
著者・出演者
Ben Arellano
公開日
2019年6月21日
この記事で紹介されているFlyPluginsは、WordPress向けの有料プラグインを開発・販売する会社です。
創業者のBen Arellanoによると、取材時点では月間継続収益が平均2万4,000ドル。2014年以降、年間課金へ移行したことで収益が安定し、過去5年間の利益率は平均約80%だったとしています。いずれも創業者本人へのインタビューに基づく数字であり、監査済みではありません。
現在も主力商品のWP CoursewareやS3 Media Maestroは販売されており、年額ライセンスによる更新モデルが続いています。
3分で要約
FlyPluginsの最初の商品は、WP CoursewareというWordPress向けのオンライン講座作成プラグインです。
Benと共同創業者のNateは、もともと自分たちでオンライン講座を作ろうとしていました。
ところが当時のWordPressには、講座を章ごとに並べ、受講者を管理し、進捗を記録できる使いやすい学習管理プラグインがありませんでした。
そこで、自分たちの講座を運営するための機能を作ります。
2012年6月に開発を始め、約4か月後の9月に最初の販売を開始しました。Ben本人には基本的な開発経験しかなく、実際のプラグイン開発は外部のPHP・JavaScript開発者へ依頼しています。
最初から大きなSaaSを作ったわけではありません。
WordPressに足りなかった一つの機能を補っただけです。
その後、自分たちがオンライン講座を運営する中で、別の問題も出てきます。
動画や音声をAmazon S3に置くと、URLを共有されれば、有料コンテンツを勝手に見られる可能性があります。
そこで、S3上の動画や音声をWordPressから安全に配信するS3 Media Maestroを作りました。これも、自分たち自身が必要としていた機能です。
さらに、課金の解約防止に使うChurnlyなど、周辺のプラグインへ広げていきました。
一つの巨大なシステムを作るのではなく、
自分たちが実際に困った小さな問題を、一つずつ商品にした。
これがFlyPluginsの成長方法でした。
主要な収益モデル
FlyPluginsの特徴は、プラグインを一度売って終わりにしなかったことです。
2014年から、各商品のライセンスを年間の継続課金へ変更しました。
利用者はプラグインそのものを使い続けることはできますが、最新版へのアップデートやサポートを受けるには、有効なライセンスが必要です。
現在のWP Coursewareは、2サイト129ドル、10サイト149ドル、25サイト199ドルの年額プランが案内されています。S3 Media Maestroも、2サイト99ドル、10サイト129ドル、25サイト159ドルの年額制です。
収益構造は、次のように分解できます。
収益=各プラグインの有料ライセンス数×年間利用料+追加プラグイン・連携機能の売上-開発人件費-外注開発費-サーバー費-決済手数料-顧客サポート費-マーケティング費
このモデルの強みは、同じソフトウェアを多数の顧客へ販売できることです。
利用者が100人から1,000人になっても、プラグインを1,000本個別に作る必要はありません。
一方で、WordPress本体や他のプラグインが更新されるたびに、互換性確認や修正が必要です。
つまり、完全な不労所得ではありません。
それでも、顧客数と開発人員が同じ割合では増えないため、利益が残りやすい構造になります。
Benによると、2014年以降の約5年間は平均約80%の利益率を維持していました。
開始コスト
Benたちは、最初から社内に開発チームを抱えませんでした。
外部の開発者へ必要な機能だけを発注し、共同創業者と費用を折半しました。
借入も行わず、最初に得た利益をそのまま商品改善へ再投資しています。
最初に必要だったのは、
- WordPress上で解決したい問題
- 最小限の仕様
- 開発者への外注費
- 販売サイト
- 決済
- ライセンス管理
- 顧客サポート
です。
物理的な在庫や店舗はありません。
ただし、プラグイン販売では「作った後」の費用が重要です。
バグ修正、セキュリティ対応、WordPress本体への追随、問い合わせ対応が継続的に発生します。
必要スキル
重要なのは、自分でコードを全部書けることではありません。
「どの機能なら、既存ソフトへ追加するだけで価値が生まれるか」を見つける力です。
WP Coursewareの場合、WordPress自体を作り直したわけではありません。
WordPressにはすでに、
- Webサイト
- ユーザー管理
- 記事管理
- 決済との連携
- 多数の利用者
という巨大な基盤がありました。
FlyPluginsは、その上に「オンライン講座」という用途だけを追加しました。
さらに必要なのが、保守の設計です。
WordPressプラグインは、一度正常に動けば終わりではありません。
本体、PHP、テーマ、決済サービス、外部プラグインが変われば、不具合が起きる可能性があります。
そのため、サポートと更新そのものが商品価値になります。
他人が見落としていたポイント
他人は、オンライン講座を売るには、独自の学習システムを作らなければならないと考えていました。
しかしBenたちは、WordPressという既に大量の利用者がいる基盤を見ていました。
必要なのは、新しいプラットフォームではありません。
既存のWordPressに足りない一部分だけでした。
さらに、一つ目の商品から次の商品も生まれています。
WP Coursewareを使う。
動画配信が必要になる。
動画を守りたくなる。
課金管理も必要になる。
一つの商品を使った顧客が、その隣の問題にも困ります。
S3 Media Maestroも、もともとは自分たちのオンライン講座用に作った機能でした。Ben自身も、「自分たちの必要を解決したものを、補完商品として販売した」と説明しています。
他人は、一つの商品を作ったら、次は別の市場を探します。
しかしFlyPluginsは、同じ顧客が次に困ることを探しました。
その結果、複数の商品が一つの小さな生態系になっています。
日本ならどう応用できるか
日本で同じWordPress講座プラグインを作る必要はありません。
参考にすべきなのは、すでに利用者が多いソフトやサービスの「足りない一機能」を商品にすることです。
たとえば、
- Googleスプレッドシートの特定業務向けアドオン
- Shopify店舗向けの小型アプリ
- kintone向けの業種別プラグイン
- Chrome拡張機能
- SlackやTeamsの追加ツール
- WordPressの業種特化機能
- Google Workspaceの自動化ツール
などが考えられます。
たとえば、既存の表計算を使う企業向けに、
「毎月決まった日に未完了タスクだけを担当者へ通知する」
という機能だけでも商品になる可能性があります。
重要なのは、最初から独立した巨大なシステムを作らないことです。
顧客がすでに使っている環境へ、小さな機能だけ追加します。
導入のハードルが低く、既存の操作方法も変えなくて済みます。
5つの勝ち筋フィルター
① 中央値か、外れ値か
評価:★★★★☆
WordPressプラグイン販売自体は珍しくありません。
しかし、自社で必要になった機能から始め、同じ利用者向けの補完商品へ展開した点が優れています。
② 古くからある市場か
評価:★★★★★
オンライン教育、動画配信、会員管理は以前から存在しています。
新しい需要を作ったのではなく、既存のWordPress利用者が別の方法で解決していた問題を、専用機能へ置き換えました。
③ 期待値1以上のサイコロを何度も振れるか
評価:★★★★★
一つの小さなプラグインから始められます。
大規模な基幹システムより開発範囲を限定でき、反応がなければ次の機能を試せます。
さらに、WordPressのような巨大な既存市場の上で販売できるため、顧客をゼロから教育する必要がありません。
④ 粗利益率は高いか
評価:★★★★★
同じソフトウェアを何社にも販売でき、利用者数と同じ割合で人件費が増えません。
創業者によると、取材前5年間の平均利益率は約80%でした。
ただし、更新や問い合わせが増えれば利益率は下がります。
⑤ 再現性はあるか
評価:★★★★☆
巨大な既存サービスに不足している小さな機能を探す方法は再現できます。
一方、FlyPluginsはWordPress LMS市場のかなり早い段階で参入しています。
すでに競争が激しい機能を後から作るだけでは、同じ成果にはなりません。
どうなったら失敗するのか
最大の死亡条件は、母体となるプラットフォームの変化です。
WordPress、Chrome、Shopify、Googleなどの仕様が変われば、突然プラグインが動かなくなる可能性があります。
次に危険なのが、顧客ごとの要望をすべて追加することです。
一社だけが使う機能を作り続ければ、共通商品ではなく受託開発になります。
セキュリティ問題も大きなリスクです。
プラグインには顧客のWebサイト内で動くコードが含まれるため、脆弱性が発生すると、信用問題につながります。
また、安い買い切り価格も危険です。
FlyPluginsは当初、19.99ドルで無期限の更新とサポートを付けていましたが、その後、年額課金へ変更しました。Benは、この変更が事業の持続性に大きく影響したと振り返っています。
早期に確認したいKPI
確認すべき数字は、ダウンロード数だけではありません。
- 有料購入率
- 年間更新率
- 1顧客あたりのサポート時間
- バグ報告件数
- 解約率
- 商品別粗利益
- 複数商品購入率
特に重要なKPIは、年間ライセンスの更新率です。
新規顧客だけで売上を作るなら、毎年ゼロから販売し続けなければなりません。
更新され続けて初めて、プラグインが収益を生む資産になります。
最初に取り組むアクション
最初に売る最小の商品
すでに広く使われているサービスの中で、一つの面倒な作業だけを解決します。
たとえば、
「Googleスプレッドシートで期限超過した行だけを毎朝Slackへ通知する」
程度の小さな機能から始めます。
最初の顧客候補
現在、その処理を手作業やコピー&ペーストで行っている事業者です。
最初の集客方法
対象者20人に、
既存サービスで、毎回面倒だと思う操作は何か
を聞きます。
共通する問題が見つかったら、最小機能だけを作ります。
投入する費用と時間の上限
検証期間は2か月。
最初の開発費は5万円以内、開発期間は3週間以内とします。
顧客管理、分析、管理画面などは後回しにします。
継続または撤退を判断する基準
20人中5人以上が同じ問題を挙げ、3人以上が実際に料金を払えば継続します。
収益構造は、次の式で確認します。
収益=有料ライセンス数×年間利用料+追加商品売上-開発費-保守費-サーバー費-決済手数料-顧客サポート費-販売費
さらに、商品を増やす場合は、既存顧客から共通して出ている次の問題だけを対象にします。
この事業の本質は、WordPressプラグインを作ることではありません。すでに大量の利用者がいるプラットフォームの中から、小さいけれど繰り返し発生する不便を見つけ、その解決機能を継続課金できるデジタル資産へ変えることです。


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