借りたカメラと200ドル以下の照明から年商13.4万ドルへ。料理人の知識を商品撮影の「手戻り削減」に変えた事業

写真撮影 起業・副業アイデア

元記事
How I Turned My Photography Side Hustle Into A $134K Business

掲載サイト
CNBC Make It/YouTube

出演者・創業者
Sean Audet

公開日
2023年9月9日

元記事URL
https://www.youtube.com/watch?v=m56-QeTP5cg

補足資料
How Sean Audet Turned a Hobby Into a Six-Figure Business/Founder Reports

事業概要
Sean Audet Photographyは、カナダ・ウィニペグを拠点に、食品、飲料、商品を中心とした商業写真を制作する撮影事業です。創業者は料理人と食品開発の経験を持ち、撮影だけでなく、料理や商品の見せ方、セット、スタイリングまで含めて提供しています。

年商約13万4,000ドル、月商1万〜1万1,000ドル、200社以上との取引などの数字は、本人へのインタビューをもとにしたもので、第三者による監査済みの数値ではありません。Founder Reportsにはアフィリエイトリンクがあり、CNBCおよびYouTubeにも広告上の商業関係があります。

3分で要約

Sean Audet氏は、もともと料理人として働き、大学では生化学を学んでいました。料理の研究開発に関わるなかで撮影を始め、2018年ごろから副業として写真の仕事を受けるようになります。

開始時に使ったのは借りたカメラと、100〜200ドル程度で購入した簡易照明でした。最初の仕事はFiverrやUpworkなどを通じて獲得しましたが、初年度は週10〜20時間を費やしても大きな収益にはならず、安定した集客まで2〜3年かかったとしています。

転換点は、一般的な写真撮影を請け負うのではなく、食品・飲料・商品撮影へ専門化したことです。新型コロナウイルスの流行によって、飲食店や食品企業がオンライン販売へ移行し、商品写真の需要が増えたことも追い風になりました。

小規模案件では本人とアシスタントで対応し、規模が大きい案件ではスタイリスト、モデル、クリエイティブ担当者など最大12人ほどのチームを案件ごとに組みます。つまり、写真を撮る副業から、商品の見せ方を設計し、必要な人と道具をまとめる制作会社へ変わりました。

主要な収益モデル

収益=撮影件数×案件単価-アシスタント・スタイリスト・モデル等の人件費-スタジオ・ロケーション費-食材・小道具・背景材費-画像修正等の外注費-機材の減価・保守費-営業・ソフトウェア・保険費

報道で紹介された案件単価は1,000〜1万7,500ドルです。ただし、これは売上であり、そのまま利益になるわけではありません。案件が複雑になるほど、撮影日数、参加人数、食材、セット制作、画像修正などのコストも増えます。

基本は単発のプロジェクト収入です。一方、商品追加、季節キャンペーン、パッケージ変更のたびに同じ企業から受注できれば、実質的な継続収益になります。

蓄積する資産は写真そのものだけではありません。業種別ポートフォリオ、照明とセットの再現方法、見積もりの型、小道具、信頼できる外注先、顧客リストが、次の案件の獲得費用と制作時間を下げます。

開始コスト

本人の説明では、開始時の現金支出は100〜200ドル程度でした。カメラを借り、需要が確認できるまで高価な機材を買わなかったためです。

その後、仕事が増えた2020年ごろまでに約1万5,000ドルを機材へ投じたと報じられています。これは最初から必要だった費用ではなく、受注後に制作能力を増やすための投資です。

広告費やプラットフォーム手数料は費用として消えますが、照明、レンズ、背景、小道具は複数案件で使える制作資産です。ただし、保管場所、修理、陳腐化まで考えれば、機材は買うだけで資産になるわけではありません。

必要スキル

差がつくのはカメラ操作だけではありません。食品が照明や時間によってどう変化するかを理解し、商品の魅力が伝わる構図に変換する能力が必要です。

さらに、撮影範囲、納品枚数、修正回数、利用媒体を事前に決める見積もり能力が利益を左右します。外注チームの選定、色や品質の統一、納期管理、写真の利用条件を整理する力も欠かせません。

他人が見落としていたポイント

他人は商品撮影を「カメラマンに写真を撮ってもらう仕事」と見ていました。しかし、この事業者は、企業内に散らばっている見せ方の判断と制作調整を一括して引き受けました。

食品企業が本当に買っているのは、きれいな写真だけではありません。料理をどう盛り付けるか、何を背景に置くか、誰を手配するか、どの画像なら広告や通販ページで使えるかを判断する時間です。

料理人としての経験は、単なる経歴ではなく、撮影時の手戻りを減らす仕組みになっています。料理の状態や見せ方を理解しているため、顧客が細かく説明しなくても撮影に必要な判断を進められます。

顧客が負っていた品質不良、再撮影、関係者調整のリスクは撮影スタジオへ移ります。一方、スタジオは案件ごとにチームを組むことで、仕事がない期間にも固定人件費を払い続けるリスクを抑えています。

他人は商品撮影をカメラ技術の販売と見ていた。しかし、この事業者は「売れる見せ方を決め、制作を完了させるまでの調整仕事」を見ていた。

日本ならどう応用できるか

日本で同じ構造を使うなら、総合的な撮影会社を目指すのではなく、商品分野を一つに絞る方法があります。候補は小規模な食品ブランド、飲料、化粧品、工芸品、ハンドメイド商品などです。

最初の商品は、「1商品について白背景写真5枚、使用場面写真3枚、納期7日、修正1回」のように固定します。時間単価ではなく、顧客が通販ページや広告に使える成果物を課金単位にします。

制度上の事実として、写真には著作権が発生します。写真の利用範囲、改変、二次利用、ポートフォリオ掲載の可否は契約で明確にする必要があります。また、広告で商品の実態と異なる印象を与えないよう、表示内容は発注企業側でも確認する設計が必要です。ここで示す料金や商品設計は、日本市場で検証するための事業仮説です。

7つの勝ち筋フィルター

① 他人が見落としている切り口があるか

評価:★★★★☆

撮影技術ではなく、特定業界の知識によって顧客の説明、調整、再撮影を減らしています。写真ではなく、制作判断の外部化に課金できる点が特徴です。

② 古くからある市場か

評価:★★★★★

企業の商品撮影と広告制作は古くからある市場です。需要を教育する必要はなく、既存の撮影予算から受注できます。

③ 小さく始められるか

評価:★★★★☆

借りた機材と簡易照明でも需要を確認できます。ただし、品質を上げる段階では照明、背景、作業場所への投資が必要です。

④ 在庫を持たずに済むか

評価:★★★★☆

販売用商品の在庫は原則として持ちません。背景材、小道具、照明は繰り返し売上を生む制作資産ですが、増やしすぎれば保管費を圧迫します。

⑤ ストック収益になるか

評価:★★★☆☆

収入は単発案件が中心です。ただし、商品追加や季節変更による再撮影、顧客との継続取引、ポートフォリオの蓄積にはストック性があります。

⑥ 粗利益率は高いか

評価:★★★☆☆

物販の仕入れはありませんが、人件費、場所、食材、モデル、画像修正などが発生します。撮影範囲と修正回数を標準化できれば改善可能です。

⑦ 再現性はあるか

評価:★★★☆☆

商品分野の専門化と案件別チーム編成は他市場へ移植できます。一方、初期段階では創業者の審美眼と業界知識への依存が残ります。

どうなったら失敗するのか

最大の死亡条件は、定額で受けた案件に無制限の修正と個別対応が入り、制作時間を予測できなくなることです。

売上が増えても、スタイリストや外注費が同じ割合以上に増えれば利益は残りません。需要確認前に高価な機材やスタジオを契約することも危険です。

また、「何でも撮れる」と対象を広げると、分野別のポートフォリオが育たず、価格競争に巻き込まれます。供給された食品の劣化や返送条件、顧客ごとの修正工数が読めない状態も採算を崩します。

早期に確認したいKPI

最も重要なKPI=修正対応を含む1制作時間あたり粗利益

売上だけでは、外注費や修正時間の増加を見落とします。案件ごとに売上から直接経費を引き、打ち合わせ、撮影、修正を含む総時間で割る必要があります。

最初に取り組むアクション

最初に売る最小の商品

食品または飲料1商品を対象に、白背景写真5枚、使用場面写真3枚、修正1回、7日納品の商品撮影パックを販売します。

最初の顧客候補

BASEやShopifyで自社商品を販売している小規模な菓子、調味料、茶、コーヒー、クラフト飲料の事業者に絞ります。

最初の集客方法

候補企業の商品ページを確認し、1枚だけ透かし入りの試作写真または構図案を作って直接提案します。広告は使わず、15社への個別営業で反応を確認します。

投入する費用と時間の上限

6週間、企業15社、外部支出5万円以内、作業時間40時間以内。

需要確認前にカメラ、レンズ、スタジオを新規購入・契約しないことを条件にします。

継続または撤退を判断する基準

15社中3社が有料テストを購入し、そのうち2社が3万円以上を受け入れた場合は継続します。修正時間が総制作時間の20%以内、1制作時間あたり粗利益が4,000円以上、60日以内に1社以上から再発注または次回予約が入ることも確認します。

有料購入が0件、または40時間を使って基準を満たさなければ、追加機材を買わずに撤退します。

まとめ

この会社に残るのは、撮影済みの画像だけではありません。分野別の見せ方、照明とセットの再現方法、見積もり基準、外注ネットワーク、顧客との関係が、案件を重ねるたびに蓄積します。

この事業の本質は、きれいな商品写真を撮ることではありません。顧客が社内で抱えていた「売れる見せ方を決め、必要な人と道具を集め、使える素材に仕上げるまで」の調整仕事を引き受け、その判断基準と制作工程を次の案件にも使える資産へ変えることです。


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