削減額の25%だけもらう。SaaSコスト削減を「固定料金」ではなく成果報酬にしたSpendbase

コスト削減 起業・副業アイデア

元記事

記事タイトル
Growing to an 8-figure ARR in three years with savings-based pricing

掲載サイト
Indie Hackers

著者
James Fleischmann氏

創業者
Andrew Alex氏(Spendbase)

公開日
2026年4月2日

元記事URL
https://www.indiehackers.com/post/tech/growing-to-an-8-figure-arr-in-three-years-with-savings-based-pricing-RQZkdT4qgvFZ5wAtNuLA

Spendbaseは、企業が契約しているSaaSやクラウド費用を可視化し、使われていないライセンスの発見、契約更新管理、価格交渉、調達管理などを行うサービスです。

Indie Hackersの取材時点で、ARRは8桁ドル、前年比成長率300%、利用企業は800社超。チームは200人超まで拡大しています。(indiehackers.com)

規模だけを見ると、もはや典型的なスモールビジネスではありません。

それでも取り上げる理由があります。

創業時に見つけた問題も、最初の商品も非常に小さい。

そして何より、

「いくら機能を提供するか」ではなく、「いくら顧客のお金を残せたか」で料金を決めた

という価格設計が強いからです。

売上や成長率などは創業者本人へのインタビューおよび会社公表値をもとにしており、第三者による監査済みの数値とは限りません。

3分で要約

事業のきっかけは、かなり身近な無駄でした。

創業者の知人が、退職して2年経っているのに、以前の会社が年間3,000ドル相当のソフトウェアライセンスを払い続けていた。

別の会社では、1ライセンス1万ドルの商品を10人分更新したのに、実際に使っていたのは一人だけ。

逆に、退職したマーケターのアカウントを何も考えず解約した結果、4年間蓄積していた重要データまで消えてしまったケースもありました。(indiehackers.com)

多くの会社では、SaaS契約をスプレッドシートで管理しています。

誰が何を使っているか。

更新日はいつか。

同じようなツールを二重契約していないか。

退職者のアカウントが残っていないか。

年間契約を更新すべきか。

これが十分に見えていません。

そこで2023年初頭、まず作ったのがSaaS契約を一カ所で可視化するツールでした。

その後、

更新管理。

利用状況分析。

ベンダー価格のベンチマーク。

価格交渉。

購買ワークフロー。

クラウド費用削減。

へ広げていきます。(indiehackers.com)

しかし、今回重要なのは機能ではありません。

価格です。

Spendbaseは、顧客へ、

「このシステムに年間○万円払ってください」

だけでは売りません。

中心となる考え方はSavings-based Pricing。

会社公式のベンダー交渉サービスでは、削減できた金額の**25%**を成功報酬として受け取ります。

削減できなければ、その成果報酬は発生しません。(spendbase.co)

創業者はさらに、

顧客がSpendbaseへ1ドル払うなら、最低2ドルの測定可能な削減効果を出す

ことを価格設計の基本原則として説明しています。(indiehackers.com)

つまり販売時の会話が、

「このソフトにはこんな機能があります」

ではなく、

「今すでに失っている100万円を、75万円取り戻しませんか」

になります。

主要な収益モデル

単純化すると、

収益=顧客のSaaS・クラウド削減額×成果報酬率+プラットフォーム利用料+関連金融・調達サービス収益-交渉担当者人件費-開発費-クラウド費-営業費-顧客サポート費-コンプライアンス費

です。

ベンダー交渉だけを見るなら、

収益=実現した削減額×25%-交渉人件費-顧客管理費-システム費

となります。(spendbase.co)

仮に年間400万円のSaaS費を100万円削減したとします。

顧客には75万円が残る。

Spendbaseは25万円を受け取る。

この料金は「コスト」には違いありません。

しかし顧客側のPLを見ると、

契約前より75万円改善している。

ここが普通のSaaSと違います。

一般的なソフトウェアは、導入するとまず販管費が増えます。

効果が出るかはその後です。

Spendbaseは、

先に利益改善余地を見つけ、その改善額から料金を取る。

顧客の予算を奪うというより、新しく生まれた利益を分ける構造です。

開始コスト

現在は200人超の組織ですが、スタート地点はずっと単純でした。

最初から法人カードや金融機能を作ったわけではありません。

まず、

会社が何のSaaSを使い、いくら払っているのか分からない

という一点を解決する可視化ツールから始めています。(indiehackers.com)

この事業構造を小さく試すなら、そもそも最初はソフトウェアすら不要です。

企業一社から、

契約サービス一覧。

契約額。

利用人数。

更新日。

実利用者。

をスプレッドシートでもらう。

それを見て、

「これとこれは重複している」

「この10アカウント中8つは使われていない」

「次回更新前に価格交渉余地がある」

と洗い出す。

削減できたら25%ください

なら、人力でも検証できます。

システムは需要が分かってから作ればいい。

必要スキル

必要なのは単なる経費削減能力ではありません。

まず重要なのが、削減してよい費用と、削減してはいけない費用を区別することです。

使われていないライセンスは解約すればいい。

しかし、退職者アカウントを削除したことで重要データまで失った事例のように、安易な解約は別の損失を生むことがあります。(indiehackers.com)

次に必要なのが交渉力です。

SaaSベンダーの価格は必ずしも定価通りではありません。

契約期間。

ユーザー数。

更新時期。

他社の価格水準。

過去の契約条件。

を知っていれば交渉余地があります。

Spendbase公式では、平均ソフトウェア削減率を39%、ベンダー交渉成功率を86%としています。もちろん会社公表値なのでそのまま一般化はできませんが、価格データの蓄積そのものが交渉力になることは分かります。(spendbase.co)

一社だけなら、

「安くしてください」

です。

800社分の契約データを持つ会社なら、

「同条件の企業ではこの水準です」

と言える。

顧客が増えるほど、次の顧客への価値も高まります。

他人が見落としていたポイント

普通、SaaSを売る会社は、

月額1万円。

月額10万円。

1ユーザー500円。

のように、自分の商品を基準に価格を決めます。

Spendbaseは逆です。

顧客側で生まれた価値を基準に価格を決めました。

これは営業上かなり強い。

たとえば、

「経費削減コンサル 月20万円」

と言われれば、

本当に元が取れるのか。

どれだけ削減できるのか。

社内で稟議を通せるのか。

という問題が生まれます。

しかし、

「100万円削減できたら25万円ください。できなければ成功報酬はありません」

なら、論点が変わります。

比較対象は「25万円払うかどうか」ではありません。

「75万円手元に残すか、100万円を払い続けるか」

です。

さらに面白いのは、Spendbaseが削減対象を「無駄なSaaS」だけにしていないことです。

契約統合。

更新タイミング。

クラウド費。

割引プログラム。

利用状況。

まで見る。

つまりツールを解約する商売ではなく、

企業がすでに払っている金額と、本来払うべき金額の差を探す商売

です。

他人は「SaaS管理ソフト」を見ていた。しかし、この事業者は、顧客がすでに失っている金額を見つけ、その回収額の一部を料金にすれば、購入判断そのものを簡単にできることを見ていました。

「コスト削減」は利益への距離が短い

売上向上サービスには、一つ難しい点があります。

Webサイトを改善した。

広告を出した。

営業研修をした。

でも、

その結果、本当に売上がいくら増えたのか。

他の要因と分けにくい。

一方、コスト削減は比較的測りやすい。

年間120万円だった契約が90万円になった。

使っていない20ライセンスを止めて24万円減った。

数字で分かります。

つまり、

成果報酬と相性がいいのは、「成果を測定できる仕事」です。

成果測定が曖昧なのに成果報酬へすると、顧客との認識差が起こります。

Spendbaseの強さは、サービス内容以上に、

削減額という明確なメーターがある市場を選んだこと

にあります。

日本ならどう応用できるか

日本でこの構造を応用するなら、SaaSだけに限定する必要はありません。

見るべきなのは、

毎月・毎年支払っているが、社内で十分に管理されていない固定費

です。

たとえば、

クラウドサービス。

通信回線。

複合機。

保険。

保守契約。

決済手数料。

求人媒体。

各種会員費。

倉庫。

リース。

などです。

商品は、

「固定費診断無料。削減できた金額の20〜30%だけ成功報酬」

でも成立します。

最初からシステムを作る必要もありません。

契約書と請求書を20〜30件集め、

契約金額。

利用状況。

更新日。

代替手段。

相場。

を一覧化する。

そこから3件削減できれば商品になります。

ただし、削減だけを目的にすると危険です。

業務継続上必要な契約まで切る。

違約金を見落とす。

データ保持を確認せずシステムを解約する。

といった問題が起きます。

特に企業のSaaS整理では、契約終了時のデータ保持、エクスポート、アカウント権限などを含めた退出設計まで確認する必要があります。

7つの勝ち筋フィルター

① 他人が見落としている切り口があるか

評価:★★★★★

ソフトウェア機能ではなく、削減できた金額そのものを課金基準にしています。

価格設定まで商品設計の一部になっています。

② 古くからある市場か

評価:★★★★★

企業の固定費削減、価格交渉、購買管理は昔から存在します。

新しい需要を作る必要はありません。

③ 小さく始められるか

評価:★★★★★

最初はスプレッドシートと人力診断だけでも検証できます。

顧客一社の契約一覧から始められます。

④ 在庫を持たずに済むか

評価:★★★★★

商品在庫はありません。

主な原価は調査、交渉、人件費です。

⑤ ストック収益になるか

評価:★★★★☆

単発の削減成功報酬だけならフロー収益です。

一方、契約更新管理、利用状況監視、購買管理まで入ると継続収益になります。Spendbase自体も継続管理プラットフォームへ広がっています。(indiehackers.com)

⑥ 粗利益率は高いか

評価:★★★★☆

在庫や設備は不要です。

一方、価格交渉を人間が行う部分には工数がかかります。

顧客数が増えるほど価格ベンチマークや交渉ノウハウを再利用できる状態を作れるかが利益率を左右します。

⑦ 再現性はあるか

評価:★★★★★

「顧客の成果が数字で測れる→成果額の一部をもらう」という構造は多くのコスト削減サービスへ移せます。

特定のSaaS技術そのものへの依存度は低いモデルです。

どうなったら失敗するのか

最大の死亡条件は、削減できる費用しか見ず、削減したことによる損失を見ないことです。

年間10万円節約した。

しかし必要なデータを失った。

業務効率が落ちて人件費が30万円増えた。

これでは意味がありません。

二つ目は、削減額の定義が曖昧なことです。

「定価なら100万円だったので30万円削減しました」

と事業者が言っても、顧客が最初から70万円で契約できるつもりだったなら成果とは言えません。

何を基準価格として成果額を算定するのかを契約前に決める必要があります。

三つ目は、最初の削減が終わったら仕事がなくなることです。

一度無駄をなくせば、翌年同じ100万円をもう一度削ることはできません。

だから継続事業にするなら、

新規購入。

更新管理。

利用率確認。

契約交渉。

退職者処理。

など、無駄が再発する工程へ入る必要があります。

早期に確認したいKPI

見るべき数字は、診断企業あたり年間対象費用、削減率、交渉成功率、平均削減額、1案件あたり作業時間、成果報酬額、翌年継続率などです。

その中でも最も重要なのは、

最も重要なKPI=1時間の作業で顧客に生み出せる年間削減額

です。

100時間かけて10万円削減する案件は成立しません。

5時間で100万円削減できるなら、顧客へ75万円残し、自社が25万円取っても十分な経済性があります。

つまり、

自分の作業時間ではなく、顧客側で動かせる金額が大きい場所

を狙う必要があります。

最初に取り組むアクション

最初に売る最小の商品

「経費削減コンサル全般」にはしません。

企業が毎月払っている一種類の固定費について、契約10〜20件を診断するサービスまで絞ります。

たとえばSaaSだけでも構いません。

最初の顧客候補

SaaSや固定費契約が増えている一方、専門の購買担当者がいない企業です。

特に、契約の判断が各部署へ分散している会社が候補になります。

最初の集客方法

企業10社へ、

「年間でいくらSaaSに払っているか、すぐ答えられますか」

と聞きます。

答えられない企業へ、

「一度一覧化し、削減余地がなければ無料。削減できたら成果額の25%」

という小規模テストを提案します。

投入する費用と時間の上限

6週間、企業3社、各社20契約以内、外部支出3万円以内。

システムは作りません。

最初はスプレッドシート、人力確認、人力交渉で十分です。

継続または撤退を判断する基準

3社を診断し、最低2社で年間支出の5%以上の実削減を出せること。

さらに、

成果報酬÷実作業時間が、目標とする時間単価を十分に上回ること

を確認します。

成立して初めて、自動検出や契約管理の仕組みへ投資します。

この事業の本質は、SaaSの契約を安くすることではありません。顧客に新しい予算を出してもらうのではなく、すでに失っているお金を回収し、その回収額を顧客と分けることで、買うリスクそのものを小さくすることです。

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