1つのPHPファイルが月10.1万ドル。無料求人を集めて企業に「人材への到達権」を売ったRemote OK

ノートパソコンでリモートワークをする人物 起業・副業アイデア
Photo by Christin Hume on Unsplash(O-DAN経由)

元記事

記事タイトル:How I built Remote | OK and launched it to #1 on Product Hunt
掲載サイト:levels.io
著者・創業者:Pieter Levels
公開日:2015年4月2日
元記事URL:https://levels.io/remote-ok/

Remote OKは、世界各地のリモート求人を集約し、求職者には無料で検索機能を、企業には有料の求人掲載枠を提供する求人サイトである。創業者は2021年4月、単一のPHPファイルで動く同サービスが同月10万1,101ドルを売り上げたと公表した。また2017年8月には、Remote OKを含む複数事業の月商3万4,733ドルに対して経費3,950ドルだったと公開している。

これらは創業者本人のブログおよび発信をもとにした数字であり、第三者による監査済みの数値ではない。元記事は創業者自身が運営するサイトであり、自社サービスを紹介する商業的な関係がある。

3分で要約

Pieter Levelsは、デジタルノマド向け都市情報サイトNomad Listを運営していた。そこで集まる利用者が次に必要とするものは、旅行情報ではなく、場所を選ばず続けられる仕事だった。

最初の商品は、リモート求人を一覧できる簡素な求人ページである。ゼロから求人企業を営業で集めるのではなく、既に公開されている求人情報を集約し、求職者にとって探しやすい形へ整えた。初期には求人データの重複、古い求人、勤務地表記の揺れなど、情報の品質管理が課題になった。

転換点は、無料の求人一覧そのものではなく、そこに集まったリモート勤務希望者へのアクセスを企業に販売したことだった。つまり、求人情報を見せる会社から、特定の働き方を望む人材の「集まる場所」を企業に売る会社へ変わった。

主要な収益モデル

収益=有料求人掲載件数×掲載単価+上位表示・強調表示などの追加料金-決済手数料-サーバー費-求人収集・整形費-不正求人の審査費-顧客対応費-集客費

求職者の閲覧は無料で、採用したい企業側が掲載料を払う。求人数が増えれば、データ取得、重複排除、掲載審査、問い合わせ対応のコストは増える。ただし、求人1件ごとに新しい店舗や在庫を用意する必要はない。収集と掲載を自動化できれば、売上よりコストの増加を遅くできる。

収入の中心は掲載ごとの単発売上だが、採用を続ける企業から反復受注が生まれる。さらに蓄積する資産は、過去の求人データ、職種・スキル・地域の分類、検索流入、求職者の認知、採用企業との関係である。求人記事は掲載期間が終わっても、市場の給与水準や需要を示すデータとして別の商品に転用できる。

開始コスト

創業時の正確な現金支出は公表されていない。ただし、必要なのはドメイン、サーバー、決済機能、求人を取得・整形する開発時間であり、在庫、店舗、車両は不要だった。初期費用の中心は現金より創業者の開発時間である。

ドメイン代や広告費は費用として消える。一方、検索され続ける求人ページ、職種分類、企業データ、重複排除の仕組みは将来の掲載売上を生む資産への投資になる。低資本ではあるが、情報の鮮度と信頼性を維持する作業まで無料になるわけではない。

必要スキル

差がつくのは、高度な画面デザインより、散らかった求人情報を同じ形式に直すデータ整理、期限切れや詐欺求人を除く品質管理、企業が支払える掲載価格の設計、検索される職種分類、掲載から応募までを測る計測設計である。

もう一つ重要なのは、先に求職者を集める需要側の立ち上げである。企業へ掲載営業をする前に「ここへ出せば候補者へ届く」と説明できる閲覧量を作れなければ、求人掲載枠は売れない。

他人が見落としていたポイント

他人は求人票を商品として見ていた。しかし、この事業者は、特定の条件で働きたい人が集まる場所を商品として見ていた。

求職者が買っているのは求人情報ではない。大量の一般求人から「リモート勤務が可能な仕事」だけを探す時間の短縮である。企業が買っているのも掲載ページではない。リモート勤務を希望する候補者へ効率よく到達する権利である。

リスクも移動している。従来は求職者が複数サイトを巡って見つけるリスクを負い、企業は一般求人媒体で関係の薄い閲覧者にも広告費を払っていた。Remote OKは情報収集と分類のリスクを引き受け、企業には採用対象が集まった後で掲載枠を販売した。

日本ならどう応用できるか

「日本版リモート求人サイト」をそのまま作る必要はない。移植すべきなのは、複数の場所に散らばる公開情報を、特定条件だけで再分類し、閲覧者を先に集め、供給側へ掲載枠を売る構造である。

例えば、ホテル・飲食業界の経理責任者求人、週3日勤務が可能な専門職、地方企業の副業CFO案件、夜勤のない宿泊業求人など、一般媒体では検索条件になりにくい制約で絞る。求人件数の多さではなく、「この条件を求める人はここを見る」という認知を取る。

日本で職業紹介を行い、求人者と求職者の雇用成立をあっせんして報酬を得る場合は、原則として有料職業紹介事業の許可が論点になる。一方、求人情報を掲載するだけの募集情報等提供事業でも、提供方法によって届出や運営上の義務が生じ得る。制度上の区分は厚生労働省の最新資料と所轄窓口で確認する必要がある。

7つの勝ち筋フィルター

① 他人が見落としている切り口があるか

評価:★★★★☆

職種ではなく「働く場所の制約」で市場を切り分け、求人票ではなく特定人材への到達権を売った。

② 古くからある市場か

評価:★★★★★

採用広告は既に企業がお金を払う市場であり、新しい支出項目を教育する必要がない。

③ 小さく始められるか

評価:★★★★★

一業界・一条件の求人を手作業で集めたページとニュースレターから検証できる。

④ 在庫を持たずに済むか

評価:★★★★★

物理在庫はない。ただし、期限切れ情報を放置すると、データ資産が負債へ変わる。

⑤ ストック収益になるか

評価:★★★★☆

掲載は単発でも、企業の反復掲載、検索流入、求人データ、読者リストが蓄積する。

⑥ 粗利益率は高いか

評価:★★★★☆

原材料と物流はないが、審査、営業、顧客対応を人手で増やせば利益率は下がる。自動化余地は大きい。

⑦ 再現性はあるか

評価:★★★☆☆

構造は移植できるが、検索流入と求職者の信頼を先に作る必要があり、サイトを作るだけでは再現しない。

どうなったら失敗するのか

死亡条件は、求人数を増やすために低品質な求人を載せ、求職者が「ここを見ても使える求人がない」と判断することだ。閲覧者が減れば企業の掲載効果が下がり、値下げしても反復掲載されなくなる。

また、求人1件ごとに手作業の営業、原稿修正、候補者対応が必要になり、掲載料に対する作業時間が読めなくなると、売上と同じ割合で人件費が増える。検索エンジンだけに依存し、順位変動で求職者流入を失うことも固有の死亡条件になる。

早期に確認したいKPI

最も重要なKPI=掲載企業の90日以内再掲載率

初回掲載は営業や好奇心で取れる。しかし、再掲載は企業が候補者への到達価値を認めた結果である。補助指標として、求人1件あたりの応募開始数、掲載審査にかかる時間、期限切れ求人率、求職者のメール登録率を追う。

最初に取り組むアクション

最初に売る最小の商品

「首都圏外から応募できるホテル経理責任者求人」など、一条件に絞った週刊求人メールの最上部掲載枠を1件だけ売る。

最初の顧客候補

過去90日以内に経理責任者や管理部長を募集し、複数媒体へ求人を出している地方ホテル運営会社を候補にする。

最初の集客方法

公開求人を20件集め、毎週無料で配信する。関連職種の実務家へ直接案内し、登録者数とクリックを示したうえで、採用企業10社へ有料テストを提案する。

投入する費用と時間の上限

6週間、求人20件、企業10社、外部支出3万円、運営時間30時間以内。最初から自動収集システムを開発せず、表計算とメール配信で需要を確認する。

継続または撤退を判断する基準

企業10社中2社が1掲載3万円以上で購入し、掲載求人1件あたり3人以上が応募開始し、購入企業2社中1社が90日以内に再掲載すれば継続する。登録者200人に届かない、または有料掲載が1件も売れなければ、条件を変更するか撤退する。

まとめ

求人サイトの価値は、求人件数の多さだけでは決まらない。条件の合わない情報をどれだけ捨て、特定の人が探す時間をどれだけ減らせるかで決まる。その閲覧者が十分に集まれば、無料で集めた情報の整理が企業向けの販売資産へ変わる。

この事業の本質は、リモート求人を掲載することではありません。散らばった情報を特定条件で再編集して需要側を先に集め、その集団への到達権を供給側へ販売することです。

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