元記事
記事タイトル
Starting a Local Newsletter Business: $200K from 18K Subscribers
掲載サイト
Side Hustle Nation
出演者・創業者
Ryan Sneddon氏(Naptown Scoop)
公開日
2024年6月27日
元記事URL
https://www.sidehustlenation.com/local-newsletter-business/
Ryan Sneddon氏が運営する「Naptown Scoop」は、米メリーランド州アナポリス周辺のニュースやイベントだけを配信する無料ニュースレターです。記事掲載時点で購読者は約18,000人。年間20万ドル超の売上を生み、その中心は地元企業からの広告収入でした。
売上や購読者数は本人へのインタビューなどをもとにした数字であり、第三者による監査済みの数値とは限りません。またSide Hustle Nationは、紹介リンクなどから報酬を得る場合がある媒体であることを明記しています。
3分で要約
Ryan氏は、最初から地域ニュースレターを始めたわけではありません。
その前に「The Daily Thread」というニュースレターを約10カ月運営していました。ところが、男性ファッションからアウトドアなどへテーマが揺れ、約800人の購読者、売上約300ドルで伸び悩みます。本人も後に「焦点がなかった」と振り返っています。
そこで2020年、地元アナポリスへ戻った際に発想を逆転させました。
全国へ読者を広げるのではなく、アナポリスという一つの街だけに狭めたのです。
配信するのは、地域のイベント、飲食店、ライブ、スポーツ、行政情報など。「この街で今日何が起きているか」を一通にまとめました。開始後1カ月ほどで以前のニュースレターの購読者数を抜き、約3年半で18,000人を超えました。
成長を口コミ任せにしなかった点も特徴です。
立ち上げ初期にはFacebook広告へ約1.2万〜1.5万ドルを投入。目標とした読者獲得単価は2ドルで、50%程度の開封率、1年間読むという前提から、読者1人の保守的なLTVを7ドルと見積もっていました。つまり、「無料読者を広告費で買う」のではなく、後から広告主へ販売できる地域住民との接点を取得する投資として広告を使っていたのです。
収益源は、購読料ではありません。
地元企業が広告主です。開始2〜3週間後にはWeb制作会社から最初の広告を受注し、500ドルで6カ月間に6回掲載しました。その後は複数の広告枠を設け、不動産、医療など地域で顧客獲得価値の高い企業を長期広告主として獲得しています。
つまりこれは、ニュースを売る事業ではありません。
地域住民の注意を集め、それを地元企業へ販売する事業です。
主要な収益モデル
事業を単純化すると、
収益=配信本数×広告枠数×平均広告単価+SNS広告・会員・物販等-編集人件費-営業人件費・手数料-メール配信システム費-読者獲得広告費-取材・コンテンツ制作費-その他運営費
となります。
Naptown Scoopではニュースレター広告が収益の大部分を占めます。2024年3月にはニュースレター広告だけで15,362ドルを請求していました。
面白いのは、読者が増えても配信コストが同じ割合で増えるわけではないことです。
1万人へ送る記事も2万人へ送る記事も、基本的には同じ一本です。読者が増えれば広告価値は上がりますが、記事制作本数まで2倍にする必要はありません。
一方で規模が大きくなると、編集者、営業担当者、SNS担当者などの人件費は増えます。実際、18,000人規模になった時点では本人以外にも複数のスタッフがいました。
したがって、この商売で重要なのは「購読者数」そのものではありません。
1人の読者から年間いくら広告粗利益を生み出せるかです。
開始コスト
ニュースレター自体は、小さく始められます。
必要なのはドメイン、メール配信サービス、簡単なWebサイト、編集時間程度で、店舗も商品在庫も必要ありません。
ただし、Naptown Scoopの成長方法まで再現するなら、低資本とは言い切れません。
Ryan氏はFacebook広告へ約1.2万〜1.5万ドルを投入しました。当時持っていた貯蓄約2.5万ドルのかなり大きな部分です。
重要なのは金額ではなく、CACとLTVを計算したうえで読者獲得へ投資したことです。
広告を使わず100人から始めて、広告主が本当にお金を払うか確認することもできます。広告費を投入するのは、その後でも遅くありません。
必要スキル
この商売で本当に重要なのは文章力だけではありません。
まず必要なのは、何を載せないかを決める編集能力です。
Naptown Scoopのチームは行政、消防、地域メディアなど多数の情報源を確認し、その中から地域住民に必要な情報だけを選んでいます。価値は情報を作ること以上に、情報を探す時間を住民の代わりに引き受けることにあります。
さらに重要なのが広告営業です。
どんな業種なら読者1人に高い価値を感じるのか。どんな広告主なら半年、1年と継続するのか。広告枠をいくらで売れば双方に利益が残るのか。
ニュース編集と広告商品の設計。この二つが揃って初めて事業になります。
他人が見落としていたポイント
普通、メディアは読者を増やそうとします。
東京、日本全国、世界。対象を広げれば市場も大きくなるように見えます。
Ryan氏は逆を選びました。
読者を減らす代わりに、読者が誰なのかを明確にしたのです。
「ニュースレター読者18,000人」では広告主から見ると弱い。
しかし、
「アナポリス周辺で生活し、飲食し、家を買い、病院へ行き、地域イベントへ参加する18,000人」
なら価値は大きく変わります。
特に不動産、医療、金融、住宅サービスなど、一人の顧客を獲得したときの利益が大きく、商圏が地域に限定される事業者にとって、この読者層は魅力的です。Naptown Scoopでも高額な広告枠には不動産や医療などの広告主が目立ちます。
つまり、市場を狭めたことで広告価値が下がったのではありません。
誰に届くかが明確になったことで、1人あたりの広告価値が上がったのです。
他人は「人口4万人しかいない小さな市場」を見ていた。しかし、この事業者は「広告主が最も欲しい4万人だけが集まっている市場」を見ていました。
日本ならどう応用できるか
日本でも「全国ニュース」を新たに作る必要はありません。
たとえば、一つの市、観光地、住宅エリアなどに絞り、
「今週末のイベント」
「新しい店」
「閉店情報」
「子ども向けイベント」
「行政手続き」
「地域求人」
だけを短くまとめる形が考えられます。
ただし、「地域ニュースなら何でも成立する」とは言えません。
先に考えるべきなのは読者ではなく、誰が広告費を払うのかです。
不動産、住宅リフォーム、学習塾、医療、美容、飲食、求人など、顧客一人を獲得する価値が大きく、かつ商圏が限定される広告主が複数存在する地域ほど成立しやすくなります。
さらに、この構造は地域メディア以外にも移せます。
たとえば「ホテル業界」「介護事業者」「経理責任者」など、人数は少なくても属性が明確な読者を集めれば、業界向けSaaS、採用、設備会社、専門サービスなどから広告費を得る専門ニュースレターにもできます。
原則は同じです。
大勢を集めるのではなく、広告主が欲しい人だけを集める。
7つの勝ち筋フィルター
① 他人が見落としている切り口があるか
評価:★★★★★
「市場を広げれば広告価値も上がる」という発想を逆転させています。
狭い地域ほど読者属性が揃い、地域広告主にとって価値が高くなる点が強みです。
② 古くからある市場か
評価:★★★★★
地域新聞、折込チラシ、フリーペーパー、地域広告は昔から存在します。
新しい広告需要を作るのではなく、既存の地域広告費をメールへ移しています。
③ 小さく始められるか
評価:★★★★★
最初は100人程度でも配信できます。
広告主へ営業し、1枠でも有料で売れるか確認してから読者獲得へ投資できます。
④ 在庫を持たずに済むか
評価:★★★★★
商品在庫も店舗もありません。
広告枠は売れなければ消滅しますが、物理的な不良在庫は残りません。
⑤ ストック収益になるか
評価:★★★★☆
広告自体は契約更新が必要ですが、読者リストは蓄積する資産です。
またNaptown Scoopでは、主要広告主に半年以上、場合によっては1年以上の契約を求めていました。
⑥ 粗利益率は高いか
評価:★★★★☆
同じニュースレターに広告枠を追加して販売できるため、広告枠そのものの追加原価は小さい事業です。
ただし規模が大きくなるほど編集・営業人員が必要になります。
⑦ 再現性はあるか
評価:★★★★☆
地域を限定し、情報を集め、無料読者を獲得し、地域企業へ広告を売る型は他地域でも使えます。
ただし人口だけでは成立せず、読者のエンゲージメントと、広告費を払える地元企業の存在が必要です。
どうなったら失敗するのか
最大の死亡条件は、読者は増えたのに広告主が増えないことです。
1万人の無料読者を集めても、地域企業が月数万円の広告費を払わなければ、その読者リストは事業資産になりません。
二つ目は、情報を増やしすぎて普通の地域新聞になることです。
何でも載せると編集工数が膨らみます。Naptown Scoopも政治や犯罪を原則として深く扱わず、生活に身近な情報へ範囲を限定しています。
三つ目は、LTVを確認せず読者獲得広告へ先に大金を入れることです。
CACが200円だから安い、ではありません。その読者が将来300円しか広告粗利益を生まなければ、運営費を引いた時点で赤字です。
早期に確認したいKPI
開封率、広告枠販売率、広告継続率、読者獲得単価、読者1人当たり年間広告売上、広告主1社当たり年間売上などを確認します。
ただし最も重要なのは、読者数ではありません。
最も重要なKPIは「読者1人あたり年間広告粗利益÷読者獲得コスト」です。
これが十分に大きければ、広告費を使って読者を増やすことが投資になります。
最初に取り組むアクション
最初に売る最小の商品
まず週1回の無料ニュースレターを作ります。
広告商品も複雑にせず、1号につきスポンサー1社だけから始めます。
最初の顧客候補
地域ニュースレターなら、不動産、住宅、医療、学習塾など、顧客1人を獲得したときの価値が高い地域企業を狙います。
業界ニュースレターなら、その業界へSaaS、採用、設備、専門サービスを販売する企業が候補です。
最初の集客方法
最初から100万円の広告は使いません。
地域SNS、既存コミュニティ、店舗へのQRコード設置、紹介などでまず300〜500人を集めます。
同時に広告主候補10社へ直接営業します。
投入する費用と時間の上限
8週間、読者500人、広告主候補10社、費用5万円以内。
この段階では専任編集者も営業担当も雇いません。
継続または撤退を判断する基準
8週間で読者500人を集め、その規模でも広告主候補10社のうち最低2社が実際に有料で広告を出すかを確認します。
「1万人集まったら広告を売ろう」では遅すぎます。
500人でも誰も広告費を払わないなら、地域、読者属性、広告主候補のどこかが間違っています。
この事業の本質は、地方ニュースを配信することではありません。広告主が欲しがる人だけが集まる小さな市場を作り、その「狭さ」を広告価値へ変えることです。


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