元記事
記事タイトル
She Built a 6-Figure Business Talking About Goats
掲載サイト
Side Hustle Nation / The Side Hustle Show Episode 757
創業者
Deborah Niemann氏(Thrifty Homesteader / For the Love of Goats)
公開日
2026年8月27日
元記事URL
https://www.sidehustlenation.com/she-built-a-6-figure-business-talking-about-goats/
Deborah Niemann氏は、「ヤギ」という極端に狭いテーマで専門メディアを作り、現在は700本以上の記事、800本以上のYouTube動画、約180本のPodcast、6つのオンライン講座、150人の有料会員を持つ6桁ドル規模の事業へ育てています。2026年10月25日〜11月1日には、ポルトガルのヤギ・羊農場を巡る海外ツアーまで予定されています。
売上や会員数、収益構成などは本人へのインタビューをもとにした数字であり、第三者による監査済みの数値ではありません。またSide Hustle Nationにはスポンサーやアフィリエイトなどの商業的な導線があります。
3分で要約
事業の始まりは2002年です。
田舎へ移住し、自分たちの食料を作ろうと、ヤギ、羊、牛、豚、鶏などを飼い始めました。当然、最初は失敗します。
経験が増えると、ヤギを販売するとき購入者へ無料の飼育講習をするようになりました。
ところが、しばらくすると、
ヤギを買いたい人より、飼い方を教えてほしい人のほうが増えた。
そこで無料講習を有料化します。
つまり最初の商品転換は、
ヤギを売る
→ヤギを売るための無料サポート
→サポートそのものを売る
でした。
2006年から農場生活についてブログを書き始め、2010年には出版社から声がかかります。
最初の本は8万語。3カ月で書き上げ、初版5,000部は約9カ月で完売しました。
しかし、一冊20ドル程度の本でも本人のロイヤリティは約1ドル。5,000冊売れて約5,000ドルです。
複数の著書を合わせて約2万5,000冊売りましたが、本そのものは大きな利益源にはなりませんでした。
ただ、本によって知名度、講演依頼、検索流入、信用が生まれます。
本は利益商品ではなく、信用資産になった。
その後、オンライン講座へ進みます。
2017年に最初の「Goats 101」を約2,000人のメールリストへ販売すると、数百人が購入。約10%という高い転換率でした。
さらに2019年には月額会員制の「Goats 365」を開始。
最初は20人でしたが、現在は150人。一部には2019年から継続している会員もいます。現在の公式サイトでは月19ドルから加入でき、6講座を利用できます。上位会員には月3回のライブQ&Aも提供されています。
そして現在は、記事、動画、Podcast、講座、会員、個別相談、書籍、広告、リアルイベント、海外ツアーまで商品が広がっています。
市場を「ヤギ以外」へ広げたのではありません。
同じヤギ飼育者が次に困ることを、20年間掘り続けた結果、商品が増えていったのです。
主要な収益モデル
現在の事業を単純化すると、
収益=オンライン講座売上+月額会員売上+Web広告売上+書籍ロイヤリティ+個別相談+イベント・ツアー売上+YouTube・Podcast等の収益-Web運営費-メール・コミュニティシステム費-外注費-コンテンツ制作費-広告営業・運営費-イベント運営費
となります。
収益構成は、約70%がオンライン講座と会員制、約25%がWeb広告。Podcastスポンサーは1%未満、YouTube広告は月100ドル程度とされています。
つまり800本以上のYouTube動画があっても、YouTube広告そのものは大きな収益ではありません。
動画を見る。
記事を読む。
メール登録する。
講座を買う。
会員になる。
この導線全体で利益を作っています。
無料コンテンツを、それ単体の広告収入だけで評価していないことが重要です。
開始コスト
物理的な開始コストは小さい事業です。
最初の商品は農場で行っていた講習。その後はブログ、メール、オンライン講座です。
店舗も大量の商品在庫も必要ありません。
現在も事業の中心は、Mighty Networksによるコミュニティ・講座運営、Kitによるメール配信などのオンラインツールです。
ただし、この事例を「ほぼ無料で始められる」とだけ見ると本質を外します。
最大の投資は時間と経験です。
700本以上の記事、800本以上の動画、約180本のPodcastを積み上げるまでに約20年かかっています。
現金投資は小さい。
しかし専門知識の蓄積には時間がかかる。
そこが参入障壁です。
必要スキル
最も重要なのは、コンテンツ制作能力ではありません。
狭い領域で、現実に起きる具体的な質問へ答え続けられる能力です。
検索されるのも、
「ヤギとは何か」
ではありません。
一日にどれくらい食べるのか。
太りすぎたらどうするのか。
出産時に介入すべきなのはいつか。
寄生虫はどう判断するのか。
といった、飼育者が実際に困った瞬間の質問です。
さらに会員制では一般論だけでは足りません。
年齢。
餌。
飼育環境。
検査結果。
過去の経過。
まで聞いたうえで、「この場合はどう考えるか」を一緒に整理する必要があります。
つまり、情報を持っていることより、
一般知識を個別の文脈へ適用する能力
が商品になります。
他人が見落としていたポイント
普通、メディアを伸ばそうとすれば市場を広げます。
ヤギだけでは狭い。
次は羊。
次は鶏。
次は農業全般。
次は田舎暮らし。
そうやって読者数を増やしたくなります。
この事例は逆です。
ヤギの中を掘ります。
初心者。
栄養。
ミネラル。
寄生虫。
健康。
出産。
ビジネス。
一つのテーマを掘るほど、「ヤギの飼い方」という一商品だったものが、複数の商品へ分裂します。
さらに重要なのは、顧客が簡単には市場からいなくならないことです。
今日ヤギを飼っている人は、来月もヤギを飼っています。
初心者期が終われば、次は出産や栄養に悩む。
その次には病気や繁殖に悩む。
顧客が成長すると、新しい問題が発生する市場です。
他人は「ヤギを飼っている人は少ない」と見ていた。しかし、この事業者は、人数は少なくても、一人の顧客に何年も繰り返し発生する問題の数が非常に多いことを見ていました。
AI時代に「講座」より「会員」が強くなった
この事例でもう一つ興味深いのが、単品講座の販売が落ちる一方で、会員制は毎年伸びていることです。
2019年20人で始まったGoats 365は現在150人。
約3分の2の会員が、ライブQ&Aを含む上位プランを選んでいます。
一般的な知識はGoogleやAIでも取得できます。
しかし、
「では、うちのヤギの場合は?」
という質問は残ります。
さらに動物を扱うため、「来月講座を見ればいい」では済まない問題もあります。
だから会員は、教材だけではなく、
必要になった瞬間に、自分の状況を説明して質問できる権利
へお金を払っています。
AIによって一般情報の価格が下がるほど、個別文脈、継続関係、信頼の価値は相対的に上がります。
Google流入11万→4万でも残った資産
一方、メディア事業のリスクも明確に表れています。
Google検索でAI要約が増えた影響などにより、月間アクセスは約11万から約4万へ急落。その後は約6万まで戻っています。
20年積み上げた記事でも、検索プラットフォームの仕様変更でアクセスは大きく変動します。
そこで効いたのがメールリストです。
検索から来た読者へ、寄生虫対策やミネラル比較表などを無料配布し、メール登録してもらう。
つまり、
Googleから借りたアクセスを、自分から直接連絡できる顧客へ移していた。
「メールリストは早く始めるべきだった」というのが本人の最大の助言でもあります。
150人の会員から海外ツアーまで生まれた
会員数は150人です。
巨大コミュニティではありません。
しかし農場で会員イベントを開催すると12人が参加し、遠方からも集まりました。
さらに2026年10月25日から11月1日には、ポルトガルのヤギ・羊農場を巡るツアーを開催予定です。
公式案内では、料金は2名1室で5,500ドル、1名利用で6,500ドル。募集時点で実際にデポジットを払った参加者もおり、別日程を希望する人が出たことから、次回ツアーも計画されています。
ここまで来ると、
記事
↓
メール
↓
講座
↓
会員
↓
リアルイベント
↓
海外旅行
となります。
メディアを横に広げず、顧客との関係を縦に深くした結果、高単価商品まで自然に生まれています。
日本ならどう応用できるか
応用するなら「ヤギのような珍しいテーマを探す」という話ではありません。
見るべき条件は、
人数は少ないが、同じ人が何年もその問題に関わり、次々と新しい疑問が発生する市場
です。
例えば、
特定犬種の飼育。
特定の観葉植物。
旧車や特定車種。
キャンピングカー。
専門資格。
特定業務ソフト。
特定業界のバックオフィス実務。
などです。
「経理」のような巨大カテゴリーを狙うより、
「特定の規模・業種・状況で発生する経理課題」
まで狭める。
そして無料記事で質問へ答えながら、同じ人から繰り返し出る質問を集めます。
そこから、
テンプレート。
講座。
相談。
月額コミュニティ。
研究会。
リアルイベント。
と商品を増やしていく。
先に商品を6個考えるのではなく、一つの顧客層へ長く接していると、6個の商品が見えてくる。
この順番が重要です。
7つの勝ち筋フィルター
① 他人が見落としている切り口があるか
評価:★★★★★
市場人数ではなく、一人の顧客が持つ問題の深さを見ています。
狭い市場を横へ広げず、縦に掘った点が強いです。
② 古くからある市場か
評価:★★★★★
ヤギ飼育そのものは非常に古い営みです。
情報不足、病気、繁殖、栄養といった問題も昔から存在します。
③ 小さく始められるか
評価:★★★★★
最初は無料講習とブログでした。
いきなり講座プラットフォームやコミュニティを作る必要はありません。
④ 在庫を持たずに済むか
評価:★★★★★
デジタル商品と情報サービスが中心のため、物理在庫はほぼ必要ありません。
海外ツアーなどへ広げれば別途運営リスクは増えます。
⑤ ストック収益になるか
評価:★★★★★
月額会員、メールリスト、過去記事・動画、講座という複数のストックがあります。
特に2019年から続く会員がいる点は強い。
⑥ 粗利益率は高いか
評価:★★★★★
講座やコミュニティは、一度作った教材を複数人へ提供できるため高粗利化しやすい事業です。
一方、ライブQ&Aや個別相談が増えるほど本人の時間原価も増えます。
⑦ 再現性はあるか
評価:★★★★☆
「狭い専門領域→無料コンテンツ→メール→有料商品→会員」という構造自体は再現できます。
ただし、長期的な実体験と信頼がないテーマを、SEOだけで模倣して同じ状態を作るのは難しいでしょう。
どうなったら失敗するのか
最大の死亡条件は、市場が狭いからと、テーマを広げすぎることです。
ヤギで読者が集まったから、次は犬、猫、農業、健康まで扱う。
そうすると「この問題ならこの人」という専門ポジションが薄くなります。
二つ目は、無料コンテンツを大量に作ってから商品を考えることです。
700記事必要なのではありません。
初期段階なら記事を数本書き、質問を集め、そこから有料商品を試すほうが早い。
三つ目は、検索流入だけを資産だと思うことです。
11万アクセスが4万まで落ちた事例が示すように、検索順位は借り物です。
四つ目は、会員制を始めた結果、専門家本人の時間が無限に使われることです。
150人なら対応できても、1,500人を同じQ&A方式で対応することは難しい。
どこかで過去回答、検索可能なFAQ、他の専門家、会員同士の知識共有へ転換する必要があります。
早期に確認したいKPI
見るべき数字は、メール登録率、メール開封率、有料商品購入率、会員転換率、会員継続月数、Q&A参加率、顧客一人あたり年間売上などです。
その中でも、
最も重要なKPI=有料会員の12カ月継続率
です。
新規会員を毎月増やしても、3カ月で全員辞めるなら、コミュニティそのものに継続価値がありません。
逆に一年以上残る人が多ければ、「情報を一度買う」のではなく「この場所を持ち続けたい」と思われています。
最初に取り組むアクション
最初に売る最小の商品
いきなり10時間のオンライン講座を作りません。
一つの専門テーマについて、60分の有料Q&Aまたは少人数相談会から始めます。
最初の顧客候補
そのテーマについてすでに情報検索を繰り返し、同じ問題を数カ月・数年にわたり抱える人です。
「興味がある人」ではなく、継続的に困っている人を対象にします。
最初の集客方法
具体的な質問に答える記事を5本程度作り、無料のチェックリストや比較表と引き換えにメール登録を集めます。
その読者へ、
「このテーマについて直接質問できる60分会」
を有料で案内します。
投入する費用と時間の上限
6週間、記事5本、メール登録50人、有料相談会1回、外部支出3万円以内。
講座撮影、専用コミュニティ開発、広告大量投下はしません。
継続または撤退を判断する基準
50人程度の見込み読者へ有料相談会を案内し、最低5人が実際に料金を払うこと。
さらに終了後、その5人のうち2人以上が、
「毎月こういう場があるなら参加したい」
と回答するかを確認します。
需要が確認できて初めて月額会員を作る。
そして会員から同じ質問が繰り返し出たら、そこを講座や教材へ変える。
この事業の本質は、ヤギについて大量に発信することではありません。市場を広げる代わりに、一人の顧客が何年も抱える問題を深く追い続け、無料情報、講座、会員、イベントまで、同じ顧客との関係から次の商品を作り続けることです。


コメント